編入の英語対策は「とりあえずTOEIC」と言われます。実際そのとおりなのですが、出願が近づくと別の疑問が出てきます。TOEICが基準に届かない。英検なら準1級を持っている。これは使えないのか。

この記事では、経済系の編入を実施している主要12大学の2027年度募集要項を1校ずつ照合して、どの試験が使えてどれが使えないかを確定させました。

先に結論を書きます。「TOEICがだめなら英検で」という一般論は、経済系の編入ではほとんど通用しません。英検が使えるのは12校中3校だけです。

この記事の要点

  • 英検が使えるのは関西大 商学部・近畿大 経済学部・広島大 経済学部の3校。国公立9校のうち認めているのは広島大だけ
  • 神戸大と滋賀大はTOEIC L&R一択。TOEFLもIELTSも受け付けていない
  • 近畿大はTOEIC L&R単独では出願できない。S&Wを含む4技能が必要
  • 同じ大学でも学部で条件が違う。TOEFL iBTのHome Editionも大学によって可否が割れる

12大学の対応状況(一覧)

2027年度(令和9年度)の募集要項をもとに整理しました。

大学・学部 TOEIC TOEFL 英検 IELTS
神戸大 経済 L&Rのみ
神戸大 経営 L&R(S&Wは不可) iBT・revised PDT Academic
滋賀大 経済 L&Rのみ
名古屋大 経済 590以上 iBT 61
大阪大 経済 L&R iBT Academic
横浜国立大 経済 L&R 620 iBT 61
京都大 経済 iBTのみ
東北大 経済 L&Rのみ
広島大 経済 L&R(公開テスト) iBT Academic
同志社大 商 L&R 650 iBT 4 5.5
関西大 商 L&R 630 準1級
近畿大 経済 L&R単独は不可 iBT

各大学の2027年度(令和9年度)募集要項を照合して作成。龍谷大 経済は当日の筆記試験で英語を課すため、スコア提出そのものが不要で表から除いています。要件は年度ごとに変わるため、出願前に必ず各大学の公式要項をご確認ください。2026年9月20日に、神戸大 経営・京都大 経済・東北大 経済・広島大 経済の4校を追加しました(いずれも令和9年度の要項で確認)。

この表を眺めるだけでも、統一された基準がまったく存在しないことが分かると思います。順に見ていきます。

英検が使えるのは3校だけ

まず本題の英検です。12校のうち受け付けているのは、関西大 商学部・近畿大 経済学部・広島大 経済学部の3校だけでした。

関西大 商学部|準1級以上

関西大商の出願資格は「TOEIC L&R 630点」か「英検 準1級」のどちらかを満たすこと。二者択一で、片方あれば足ります。しかも英検S-CBT・英検CBT・英検S-Interviewも対象と明記されているため、受験機会を作りやすいのが利点です。

TOEICが伸び悩んでいて英検準1級を持っている人にとって、関西大商は数少ない出願先になります。

近畿大 経済学部|有効期限の設定がない

近畿大の経済学部も英検を受け付けています。特徴的なのは「実用英語技能検定は、有効期限の設定はありません」と要項に書かれている点です。

他の試験は「出願開始日より過去2年以内」という制限がありますが、英検だけは何年前の合格でも有効です。昔取った準1級が手元にある人には、これは大きな意味を持ちます。

広島大 経済学部|国公立で英検が使えるのはここだけ

広島大学は英語民間試験のスコアを出願時に提出する方式で、認めている8種類のなかに英検が入っています。並んでいるのはTOEIC L&R(公開テスト)・TOEFL iBT・IELTS(Academic)・英検・ケンブリッジ英語検定・GTEC・TEAP・TEAP CBTで、このうち1つの成績証明書等を提出します。

有効期間の決め方も他校と違います。要項は「各英語民間試験実施団体が定める固有の有効期限に関わらず」令和6年6月1日以降に実施された試験を有効とすると書いています。ただし200点への換算方法と、出願に必要な最低スコアは要項に書かれていません。何点あれば何点になるかを逆算して目標を置くことはできません。

※要項に記載がないことと、大学が公表していないことは別です。必要であれば経済学部の入試担当に問い合わせてください。試験科目や配点は広島大学 経済学部 編入の難易度・試験科目・対策で整理しています。

ほかの国公立8校は不可

一方で、神戸大(経済・経営)・滋賀大・名古屋大・大阪大・横浜国立大・京都大・東北大の8校は、いずれも英検を受け付けていません。要項に選択肢として存在しないため、準1級でも1級でも出願書類になりません。

「英語力の証明なのだから何でもいいだろう」とは、残念ながらなりません。国公立の経済系で英検が使えるのは広島大だけなので、ほかも受けるならTOEIC(またはTOEFL)が要ります。


次に読む
大学編入の英語対策|TOEICは何点必要か

TOEICなら安全、とも限らない

では「全部TOEICで揃えればいい」かというと、ここにも見落としやすい点があります。

近畿大はL&R単独では出願できない

もっとも注意が必要なのが近畿大 経済学部です。要項にはこうあります。

TOEICの得点はS&W(計400点)を含む4技能(1390点満点)とします。(TOEIC L&R公開テストのみの受験およびTOEIC S&W公開テストのみの受験、IPテストのスコアは認められません)

(2027年度 近畿大学 編入学試験要項)

一般にTOEICと呼ばれているL&R(Listening & Reading)だけでは、近畿大には出願できません。Speaking & Writingも受験して、4技能そろえる必要があります。

これは見落とすと致命的です。他校向けにL&Rを積み上げてきた人が、近畿大を併願しようとして初めて気づく、という順序になりがちだからです。S&Wは実施回数も申込方法もL&Rと別なので、思い立ってすぐ受けられるとは限りません。

IPテストは軒並み不可

大学が団体で実施するIPテストは、神戸大・名古屋大・関西大・近畿大(経済学部)のいずれでも認められていません。個人で申し込む公開テストを受ける必要があります。

「大学で受けたTOEICのスコアがあるから大丈夫」と思っていたら、それがIPだった——という取り違えは本当によく起きます。手元のスコア票を見て、公開テストかどうかを最初に確認してください。

神戸大はSpeaking & Writingも不可

逆方向の注意もあります。神戸大はTOEIC L&Rのみ有効で、TOEIC Speaking & Writingは認めないと明記しています。近畿大とはちょうど正反対の条件です。

近畿大のためにS&Wを取っても、神戸大では1点にもなりません。逆に神戸大のためにL&Rだけを磨いても、近畿大では出願要件を満たせない。この2校を併願するなら、両方の受験が必要になります。

スコアの有効期間も統一されていない

大学 有効期間の定め方
神戸大 経済 2024年11月1日以降に受験したもの
神戸大 経営 令和8年9月末より前2年以内に受験したもの
京都大 経済 2024年10月1日以降に受験したもの(MyBestスコアは不可)
東北大 経済 2024年10月1日以降に受験したもの
広島大 経済 令和6年6月1日以降に実施されたもの(各試験団体の有効期限は問わない)
名古屋大 経済 2024年10月9日以降に受験したもの
同志社大 商 2024年10月1日以降に受験したもの
滋賀大 経済 令和6年7月1日〜令和8年7月31日に実施されたもの
横浜国立大 経済 出願期間最終日において2年以内
関西大 商 出願時において過去2年以内
近畿大 経済 出願開始日より過去2年以内(英検は期限なし

おおむね「2年」ですが、起点が「出願日」なのか「特定の日付」なのかがバラバラです。とくに滋賀大は上限(令和8年7月31日まで)も設けているため、8月以降に受けたスコアでは出願できません。

1つのスコアで複数校に出すつもりなら、いちばん厳しい大学の期間に合わせて受験時期を決める必要があります。

TOEFL・IELTSを使う場合の注意点

TOEFL iBT Home Editionの可否が割れる

自宅受験できるTOEFL iBT Home Editionは、便利なぶん扱いが分かれます。

名古屋大 経済 Home Edition
横浜国立大 経済 Home Edition (「Home Editionを含む」と明記)
大阪大 経済 Home Edition 不可
同志社大 商 Home Edition 不可
神戸大 経営 Home Edition 不可
京都大 経済 Home Edition 不可

同じTOEFL iBTでも、受験形態で受理されたりされなかったりします。なおTOEFL ITP(団体向け)は、確認した全校で対象外でした。

MyBestスコアは使えない

TOEFLには複数回の最高点を組み合わせるMyBestスコアという仕組みがあります。ただし名古屋大・大阪大・同志社大・近畿大・横浜国立大・京都大のいずれも「Test Dateスコアのみ」と定めています。1回の受験で基準に届く必要があります。

IELTSはAcademicのみ・オンライン版は不可

IELTSを受け付けているのは大阪大・同志社大・近畿大・神戸大 経営学部・広島大です。ただし条件があります。

大阪大の要項ではGeneral Training Module、IELTS Indicator、IELTS Onlineは利用できないと明記されています。同志社大もIELTS OnlineとOne Skill Retakeは対象外です。こちらはコンピュータ版とIELTS for UKVIのAcademic Moduleを対象としています。

神戸大 経営学部はIELTSのオンライン版を認めず、広島大はOne Skill Retakeを対象外としています。「IELTSを持っている」だけでは足りず、どの方式で受けたかまで問われます。

同じ大学でも学部で条件が違う

この記事でいちばん強調したいのがここです。要項は「大学単位」ではなく「学部単位」で読む必要があります。

同志社大|文学部英文学科は英検可、商学部は不可

同志社大学の転入学・編入学試験要項を見ます。文学部英文学科の出願資格にはTOEFL iBT・TOEIC・IELTS・実用英語技能検定(英検)準1級以上の4つが並んでいます。

ところが商学部の項目には英検が入っていません。選択肢はTOEFL iBT・TOEIC・IELTSの3つだけです。同じPDFの数ページ違いで条件が変わります。

近畿大|経済学部と経営学部で扱いが逆転する

近畿大はさらに細かく分かれています。

学部 TOEIC L&R単独 IPテスト
経済学部 不可(S&Wとの4技能が必要) 不可
経営学部 (オンライン方式は除く)
総合社会学部 可(同上)

経済学部ではIPテストが使えないのに、経営学部では使えます。L&R単独の可否も逆転しています。「近畿大は英検が使える」と大学単位で覚えていると、学部を変えた瞬間に条件が変わります。

ちなみに工学部は、証明書を提出しなければ試験当日の数学の点数で判定するという仕組みでした。

結局どれを受けるべきか

ここまでを踏まえた実務的な結論です。

① 志望校が決まっていないなら、TOEIC L&R

受け付けている大学がもっとも多く、12校中11校で使えます(近畿大はL&R単独では不可、京都大だけが受け付けていません)。まずここを積むのが最短です。目標スコアの決め方は大学編入の英語対策|TOEICは何点必要かにまとめました。

② 英検準1級を持っているなら、出願先が3校に絞られる

関西大 商学部・近畿大 経済学部・広島大 経済学部です。この3校で足りるならそれでいいですが、国公立は広島大だけなので、ほかの国公立も受けるなら結局TOEICが要ります。英検はあくまで「持っていれば選択肢が増える」ものであって、TOEICの代わりにはなりません。

③ TOEICが基準に届かないまま出願期を迎えたら

スコアが足りずに出願できない、というのが編入受験でいちばん多い行き詰まり方です。その状況で残る選択肢は限られます。

龍谷大 経済 英語は当日の筆記試験。スコア提出そのものが不要
神戸大 経済滋賀大 経済 最低点の設定がない。低いスコアでも出願自体はできる(そのぶん配点で不利)

逆に、名古屋大(590点)・横浜国立大(620点)・関西大商(630点)・同志社大商(650点)は基準に届かなければ出願すらできません。この差は併願を組むうえで決定的です。詳しくは編入試験に落ちたらどうなる?併願パターンと出願戦略で扱いました。

まとめ

英検 関西大 商・近畿大 経済・広島大 経済の3校。ほかの国公立8校はすべて不可
TOEIC 最も汎用性が高いが、近畿大はL&R単独不可神戸大はS&W不可と正反対の条件
TOEFL Home Editionの可否が大学で割れる。MyBestスコアは全校で不可
IELTS 阪大・同志社・近畿大・神戸大 経営・広島大のみ。Academic以外とオンライン版は不可
共通 IPテスト・ITPは軒並み不可。有効期間の起点も大学ごとに違う

ここまで調べて言えるのは、英語の要件に「だいたいこう」という共通ルールは存在しません。他の大学の条件から当てはめて考えると、かなりの確率で外します。

そして、この記事の一覧も2027年度時点のものにすぎません。要件は年度ごとに変わりますし、実際に私たちも調べ直す過程で、以前の理解に誤りがあったことに気づきました。最後は必ず、志望校の最新の要項を自分の目で読んでください。この記事は「要項のどこを読めばいいか」を知るために使ってください。

とはいえ、12校分の要項を突き合わせて自分の手持ちスコアで何校に出せるかを判断するのは、けっこうな作業量です。いま持っているスコアと志望校を教えてもらえれば、出願できる大学と足りない条件をその場で整理できます。私たち2人も、専門学校から神戸大学・名古屋大学の経済学部へ編入した際に同じ作業をしています(運営者プロフィールはこちら)。

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