「大学編入は年間何人くらいいるのか」——制度の規模を知りたくて調べる人は多いと思います。実際、文部科学省が毎年公表している統計に数字はあります。令和6年度は6,717人です。
ただ、この記事で最初に確認したいのは数字そのものではありません。その6,717人が「誰を数えたものか」のほうです。結論から書くと、いま大学に在籍していて編入を考えている人は、この数字に入っていません。
公的統計で分かることと、分からないこと。そして分からない部分をどう埋めるかを整理します。
この記事の要点
- 学校基本調査の編入学者数は令和6年度で6,717人(経済・経営・商学系は731人)
- ただしこの統計は短大・高専・専修学校・専攻科からの編入だけを集計している
- 4年制大学から他大学への編入は、この6区分のどこにも入っていない。制度としては実在するのに、人数が公表されていない
- 統計がない以上、各大学の募集要項を積み上げるしかない。経済系9校の募集人員は、数が明示されている6校で計81人
公的統計で分かる数字
編入学者数の出所は、文部科学省の学校基本調査です。毎年5月1日時点で全国の学校を対象に実施される調査で、高等教育機関の集計表のなかに表17「学部別 編入学者数」があります。
この表は、編入元の学校種別に6つへ分けて集計されています。令和6年度の数字はこうです。
| 編入元 | 編入学者数 | うち経済・経営・商学系 |
|---|---|---|
| 短期大学 | 3,000人 | 484人 |
| 高等専門学校 | 2,571人 | 76人 |
| 専修学校(専門課程) | 1,101人 | 171人 |
| 高等学校(専攻科) | 43人 | 0人 |
| 中等教育学校(専攻科) | 0人 | 0人 |
| 特別支援学校(専攻科) | 2人 | 0人 |
| 合計 | 6,717人 | 731人 |
出典:文部科学省「学校基本調査」令和6年度 高等教育機関 表17「学部別 編入学者数」昼間課程の数値を集計。経済系は経済学部・経営学部・商学部・経済経営学部・経営経済学部・商経学部・経営情報学部・経済情報学部の合計。
編入というと珍しい制度に思われがちですが、年間6,700人以上が実際に利用しています。経済・経営・商学系だけでも731人。数字を見る限り、決して例外的な進路ではありません。
1年で1,147人減っている
この数字は横ばいではありません。前年度と並べると、はっきり動いています。
| 編入元 | 令和5年度 | 令和6年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 短期大学 | 3,576人 | 3,000人 | −576 |
| 高等専門学校 | 2,572人 | 2,571人 | −1 |
| 専修学校(専門課程) | 1,633人 | 1,101人 | −532 |
| 高等学校(専攻科)ほか | 83人 | 45人 | −38 |
| 合計 | 7,864人 | 6,717人 | −1,147 |
1年で1,147人、率にして15%近く減っています。減ったのは短大からと専修学校からで、この2つで1,108人分を占めます。
そして目を引くのが高等専門学校です。2,572人から2,571人へ、1人しか動いていません。他が2桁パーセントで減るなかで、ここだけ変化がない。高専からの編入が進路として制度化・定着していることがうかがえます。
高専からの編入は、経済系にはほとんど来ない
もうひとつ、編入元ごとにどの分野へ進んでいるかを見ると性格の違いが出ます。
| 編入元 | 編入学者 | うち経済・経営・商学系 | 比率 |
|---|---|---|---|
| 短期大学 | 3,000人 | 484人 | 16.1% |
| 専修学校(専門課程) | 1,101人 | 171人 | 15.5% |
| 高等専門学校 | 2,571人 | 76人 | 3.0% |
短大と専修学校からはおよそ6人に1人が経済系へ進むのに対し、高専からは33人に1人しかいません。高専生の編入先は工学系が中心で、経済系はほぼ選ばれていないということです。
裏を返せば、経済系の編入で高専出身者と競合する場面は多くないとも言えます。編入試験は編入元を問わず同じ条件で選抜されますが、実際に並ぶ顔ぶれの傾向としては知っておいて損はありません。
その6,717人に、あなたは入っていない
ここからが本題です。もう一度、先ほどの表の左列を見てください。
| 短期大学 | 集計されている |
|---|---|
| 高等専門学校 | 集計されている |
| 専修学校(専門課程) | 集計されている |
| 高等学校・中等教育学校・特別支援学校の専攻科 | 集計されている |
| 4年制大学 | 区分が存在しない |
6つの区分のどこにも、4年制大学が入っていません。
「集計されていない」だけで、いないわけではない
これは統計の対象外だという意味です。いま大学2年生で、来年3年次編入を目指している人。あるいは大学を2年以上在学して他大学へ移った人。その人数は、この6,717人に含まれていません。
制度としては、はっきり存在している
紛らわしいのは、大学から大学への編入が制度として実在することです。存在しないから集計されていない、という話ではありません。
実際、各大学の募集要項には出願資格として明記されています。たとえば名古屋大学 経済学部の2027年度要項には、こうあります。
日本において本学以外の修業年限4年以上の同一の大学において、休学期間を除いて2年以上在学し、56単位以上を取得した者
(2027年度 名古屋大学経済学部 第3年次編入学生募集要項)
大学在学中から出願できることが、はっきり書かれています。関西大学 商学部は60単位、大阪大学 経済学部は70単位と、大学ごとに基準を設けているほどです。
制度は各大学が用意している。要件も明示されている。それなのに、何人が使っているかは公表されていない。これがいまの状態です。
なぜ大学からの編入は集計されないのか
理由を断定できる資料は見つかりませんでした。分かるのは、表の作り方がそうなっているということだけです。
表17には注記があり、「大学の2年次及び3年次に編入学した者の数である」と書かれています。つまり集計対象は「2年次・3年次への編入学者」で、それを編入元の学校種別に6区分しているという作りです。その区分に大学が用意されていません。
他の表にも見当たらない
令和6年度の高等教育機関の集計表を確認すると、大学関係は表2から表20まであります。学生数、入学者数、年齢別、出身高校の所在地など多岐にわたりますが、編入学に関する表は17番だけで、大学間の転入学を集計した表は見当たりませんでした。
※本記事で確認したのは学校基本調査の高等教育機関に関する集計表です。他の統計や個別調査に該当データが存在する可能性は否定できません。「学校基本調査には載っていない」という範囲でお読みください。
統計がないなら、要項を積み上げる
では、大学から編入する人にとって規模感を測る方法はないのか。あります。各大学が要項に書いている募集人員を足していけばいいのです。
当メディアが扱っている経済・経営系9校の、2027年度の募集人員を並べます。
| 大学・学部 | 募集人員 |
|---|---|
| 神戸大学 経済学部 | 20人 |
| 横浜国立大学 経済学部 | 15名(うち社会人選抜は若干名) |
| 滋賀大学 経済学部 | 15名 |
| 龍谷大学 経済学部 | 11名(現代経済6・国際経済5) |
| 名古屋大学 経済学部 | 10名 |
| 大阪大学 経済学部 | 10名 |
| 同志社大学 商学部 | 若干名 |
| 関西大学 商学部 | 若干名 |
| 近畿大学 経済学部 | 若干名 |
| 数が明示されている6校の合計 | 81人 |
国公立ほど数字を出し、私立ほど「若干名」
この表には、はっきりした傾向が出ています。国公立5校はすべて具体的な人数を明示し、私立3校は「若干名」。龍谷大だけが私立で人数を出しています。
「若干名」は、受験者にとって扱いにくい表記です。2人なのか8人なのかで、戦略がまるで変わります。私立の編入は年度によって募集停止や科目変更もあるため、この曖昧さは織り込んでおく必要があります。
逆に言えば、人数が読める国公立のほうが、計画は立てやすいということでもあります。神戸大の20人は、国公立の経済系としてはかなり大きな枠です。
募集人員は「上限」でも「保証」でもない
ひとつ注意があります。募集人員は実際の合格者数とは一致しません。
阪大の要項には「選考の結果、募集人員にかかわらず合格としないことがあります」という趣旨の記載があります。枠を埋めるより、水準に届かない人は通さないということです。実際、令和7年度は募集10名に対して合格者が3名だったと伝えられています。
反対に、募集人員より多く合格を出す年があってもおかしくありません。要項の数字は目安であって、確定した合格者数ではないと受け取ってください。
公表されていないことが受験にどう効くか
ここまでで、公的統計に何が載っていて何が載っていないかを確認しました。ここからは、それが受験の実務にどう効いてくるかです。
ネットの「編入は年間◯人」を鵜呑みにしない
編入について書かれた記事で人数が示されているとき、その多くは学校基本調査の数字です。その数字は短大・高専・専修学校からの編入を数えたものなので、大学から編入しようとしている人が自分の状況に当てはめると、実態を見誤ります。
「何人が編入しているか」より、「自分が受ける大学の募集人員が何人か」のほうが、判断材料としてはるかに有用です。
倍率も、多くの場合は公表されていない
同じことが倍率にも言えます。志願者数と合格者数の両方を公表している大学もあれば、片方しか出していない大学もあります。名古屋大学は志願者数と入学者数を「教育情報の公表」で出していますが、合格者数は出していません。合格者数が分からなければ実質倍率は計算できないので、当メディアでも名古屋大学の倍率は断定していません。
編入試験全体の難易度感については大学編入は難しい?倍率・合格率の実態と受かる人の共通点で扱いましたが、そこでも扱えるのは公表されている範囲までです。
受ける人が少ないことは、不利を意味しない
数字が小さいと身構えてしまいますが、編入はそもそも受ける人が少ない入試です。一般入試のように何万人が受けるわけではありません。
そして受験者の多くは、TOEICのスコアが要件に届かず出願段階で脱落します。要件を満たして最後まで準備し切った人だけが並ぶ場だと考えると、見え方が変わるはずです。併願の組み方は編入試験に落ちたらどうなる?併願パターンと出願戦略にまとめました。
次に読む
編入試験に落ちたらどうなる?併願パターンと出願戦略【2027年度カレンダー】
まとめ
| 公的統計で分かること | 短大・高専・専修学校などからの編入は年間6,717人(経済系731人) |
|---|---|
| 分からないこと | 4年制大学から他大学への編入者数。制度は実在するが集計区分がない |
| 代わりに使えるもの | 各大学の募集要項の募集人員。経済系9校では明示6校で計81人 |
| 注意 | 募集人員は確定した合格者数ではない。私立は「若干名」表記が多く読みにくい |
統計に載る側と、載らない側
最後に、当メディアを運営している2人の話をします。
私たちは専門学校から神戸大学と名古屋大学の経済学部へ編入しました。つまり、この記事で扱った統計に載っている側です。専修学校からの編入者1,101人のうちの2人です。
一方で、この記事を読んでいる人の多くはいま大学に在籍しているのではないでしょうか。だとすれば、あなたは統計に載らない側にいます。何人が同じことをしているのか、どのくらいの人が成功しているのか、確かめる手立てがない。
不安になる材料に思えるかもしれませんが、見方を変えれば比較する相手がいないということでもあります。全国で何人が挑戦しているかは、あなたが受ける1校の合否には関係しません。関係するのは、その大学の募集人員と、出願日までに要件を満たせるかどうかだけです。
統計に載らない道を選ぶ人が、実際に何を準備すればいいのか。そこは経験者と一緒に具体化するのが早いと思います(運営者プロフィールはこちら)。
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