大阪大学経済学部の第3年次編入は、旧帝大クラスの国立経済編入のなかでも選抜方式がかなり独特です。当日の学科筆記試験はなく、経済学検定試験「EREミクロ・マクロ」のスコア・英語外部試験のスコア・書類による選考を通過した人だけが、口頭試問に進みます。この2段階構成は、神戸大のような「数学+経済学の筆記」で勝負する大学とは、準備の進め方がまったく変わります。

この記事では、2027年度(令和9年度)の募集要項とEREの傾向をもとに、阪大経済の第3年次編入の募集・出願資格・選抜方法・対策を整理します。数値は公式要項の公表内容に基づきますが、出願資格が令和9年度から変更されている点も含め、出願前には必ず最新の要項を確認してください。

この記事の要点

  • 募集は経済・経営学科10名。旧帝大の経済編入としては手堅い枠
  • 選抜は書類選考→口頭試問の2段階。当日の学科筆記試験はなし
  • 出願にはEREミクロ・マクロの成績証明と英語外部スコア(TOEIC/TOEFL/IELTS)が必須
  • EREは「Aランク」が一つの目安。CBTでほぼ毎日受けられるため、早く始めて伸ばす戦略が効く

試験概要|募集人員と選抜の全体像

阪大経済の第3年次編入は、経済・経営学科で10名を募集します。選抜は次の2段階です。

第1段階 書類選考(ERE成績・英語スコア・希望調書・学業成績などを総合)→ 合格者発表 2026年11月13日
第2段階 口頭試問(書類選考合格者のみ)2026年11月26日
最終合格発表 2026年12月7日

つまり、出願書類とスコアで一次を通過しなければ、口頭試問にすら進めません。当日一発の筆記で挽回する試験ではなく、出願の時点で勝負の大半が決まると理解しておきましょう。

選抜のカギ|ERE経済学検定と英語外部スコア

阪大経済の編入で最も特徴的なのが、出願時に次の2つのスコアが必須となる点です。

必須スコア 内容
経済学検定試験 EREミクロ・マクロ 日本経済学教育協会の成績証明書(原本)。「ベーシック」は不可。有効期限は入学時期から遡り2年以内
英語外部スコア TOEIC L&R(公開)/TOEFL iBT/IELTS Academic のいずれか1種。有効期限2年以内

そしてどれを選ぶかで、実質の締切が変わります。ここは要項を読み飛ばすと間に合いません。

使う試験 提出方法 実質の締切
TOEFL iBT ETSから大学へ送信(コード0521)+コピーを郵送 送信依頼の手続きが2026年9月21日
TOEIC L&R スコア票の原本、またはQRコード付きデジタル公式認定証の印刷 出願期限(10月9日)
IELTS 受験機関から大学へ成績証明書を送付 出願期限までに大学へ到着

TOEFLを使う人だけ、締切が2週間以上前倒しになります。しかも要項には「到着状況はお答えできません」と書かれているので、届いたかどうかを大学に問い合わせることもできません。TOEIC L&Rなら手元の書類を同封するだけなので、この1点だけでもTOEICのほうが事故は起きにくいといえます。

なお使えるのはTOEIC L&Rの公開テストのみで、IPテスト・Speaking & Writing・Bridgeは対象外。TOEFLもiBTのみで、Home EditionとITPは使えません(MyBest ScoresではなくTest Date Scoresで評価されます)。IELTSはAcademic Moduleのみです。

この2つが出願の条件です。英語スコアの目標設定は大学編入の英語対策|TOEICは何点必要かを参考にしてください。そして、阪大経済で合否を大きく左右するのがEREです。次で詳しく見ていきます。

ERE攻略|「Aランク」を狙う勝負

EREミクロ・マクロは、日本経済学教育協会が実施する経済学の全国検定です。阪大経済の編入では、このスコアが書類選考の中心的な判断材料になります。試験の特徴を押さえておきましょう。

方式 CBT(パソコン受験)。ほぼ毎日のように受験機会がある
出題 ミクロ経済学・マクロ経済学の2科目。90分・50問
評価 S〜Dの7段階ランク(スコア・偏差値)で、受験直後に結果が出る
阪大の目安 上位層であるAランク(大学3〜4年生レベル)を狙うのが理想

ここで効いてくるのが、EREはCBTでほぼ毎日受けられるという性質です。1回で目標ランクに届かなくても、対策を重ねて何度も挑戦し、出願までに最も良いスコアを作ることができます。だからこそ、早く始めて受験サイクルを回した人ほど有利です。

対策は、まずミクロ・マクロの基礎を教科書レベルで固めることが土台になります(編入試験の経済学の勉強法)。そのうえで、経済法令研究会の『CBT EREミクロ・マクロ 経済学検定試験 対策問題集』などで、本番の形式と頻出テーマに慣れておくと得点が安定します。なお、同じくEREを課す大学に関西大学 商学部 編入があり、ERE対策は併願校でそのまま使い回せるのも大きな利点です。


次に読む
編入試験の経済学の勉強法|ミクロ・マクロ独学ロードマップ

出願資格|「70単位以上」に注意

出願できるのは、次のいずれかに該当する人です(令和9年度から出願資格が一部変更されています)。

  • 大学・専門職大学を卒業した者、または学士の学位を授与された者(2027年3月まで見込みを含む)
  • 修業年限4年以上の大学等に2年以上在学し、出願時の総修得単位数が70単位以上の者
  • 短期大学・高等専門学校を卒業した者(卒業見込みを含む)

大学在学中から狙う場合、「70単位以上」というやや高めの単位要件がある点に注意してください(多くの大学の編入は62単位前後)。複数校の単位を合算できるルールもありますが、重複認定分は除外されます。国立の経済編入を幅広く見るなら経済学部に編入できる大学一覧大学別の編入情報もあわせてどうぞ。

日程・費用

出願期間 2026年10月5日(月)〜10月9日(金)17時必着
TOEFLで出す人の実質期限 2026年9月21日(月)/ETSへの送信依頼の手続き期限。出願期限より18日早い
検定料納入 2026年9月28日10時〜10月8日17時/30,000円
書類選考合格発表 2026年11月13日(金)
口頭試問 2026年11月26日(木)
最終合格発表 2026年12月7日(月)

※障がい等があり受験や修学で特別な配慮を希望する場合、申し出の期限は2026年8月21日(金)で、出願受付より1か月半早く設定されています。出願資格(4)(外国で相当する資格を得た人)の事前審査も、同じく8月17日〜21日が申請期間です。

倍率・難易度|「募集人員にかかわらず合格としない」厳選

阪大経済の編入で先に押さえておきたいのは、要項に「選考の結果、募集人員にかかわらず合格としないことがあります」と明記されている点です。枠を埋めることより水準を満たすことを優先する姿勢がうかがえます。実際、大阪大学が公表している過去3年の実施状況を見ると、それがそのまま数字に出ています。

令和6年度 令和7年度 令和8年度
志願者数 39 44 24
受験者数 34 44 24
合格者数 9 3 5
入学者数 8 3 4
実質倍率 3.8倍 14.7倍 4.8倍

出典:大阪大学「学部編入学及び学士入学試験実施状況表」(令和6年度・令和7年度・令和8年度/各年4月1日現在)。実質倍率は受験者数÷合格者数で算出。この表は募集要項ではなく、大学の編入学・学士入学のページに置かれています。

合格者は募集10人に対して3〜9人。埋まった年がない

3年とも、合格者が募集人員の10人に届いていません。令和7年度は44人が受験して合格3人。実質倍率は14.7倍です。

ここで注目したいのは、倍率の振れ幅のほうです。令和6年度は3.8倍、令和8年度は4.8倍。ところが令和7年度だけ14.7倍に跳ね上がっています。志願者数は24〜44人で大きくは動いていないのに、合格者を3人に絞った年があるということです。

つまり「去年の倍率」から今年の難易度を読むことができません。要項の「募集人員にかかわらず合格としないことがあります」は建前ではなく、実際にそう運用されています。この点は、3年とも実質4倍前後で安定している神戸大学 経営学部とは性格がまったく違います。

ここから読み取るべきは「入りやすい/入りにくい」ではありません。合格者の数は、大学側の判断で年ごとに動きます。志願者が24人まで減った令和8年度でも、合格は5人で止まっています。受験者数に応じて合格者を配分する試験ではないので、前年の数字を持ってきて自分の当落を見積もる材料にはなりません。やることはどの年も同じで、ERE・英語・口頭試問で水準を示すことだけです。

数学の当日筆記がないため、「数学の一発勝負は避けたいが、経済学と英語ならじっくり仕上げられる」という人には向いています。関西の国立経済を狙うなら、神戸大学 経済学部 編入と並べて、両方の方式を比較しながら併願を組むのがおすすめです。

運営者が受けた2014年の阪大|当時は当日筆記が4科目あった

ここまでは2027年度の要項の話です。最後に、制度が今とどれくらい違っていたかを実物で残しておきます。この記事を書いている2人のうち、吉川恭輔は2014年に阪大経済の編入を受験しています(進学先は神戸大学)。当時の選抜にはEREも英語の外部スコアもありません。かわりに当日の学科筆記が4科目あり、その筆記に受かった人だけが面接に進むという形でした。

吉川 恭輔吉川 恭輔神戸大学 経済学部 編入

当時はEREではなく、大学の個別学力試験でした。試験科目はミクロ経済学・マクロ経済学・統計学・経済史・会計学から4つを選ぶ形だったと思います。私は会計学を外して、ミクロ・マクロ・統計学・経済史の4科目で受けました。

※科目名は本人が「だったと思います」と述べた記憶に基づくもので、2014年当時の要項を確認したものではありません。確実なのは2027年度(令和9年度)には当日の学科筆記試験がないことです。当時の科目構成や過去問を、そのまま現在の対策の根拠にはできません。

科目ごとの手応え|経済史は「完答1問」、統計学は基礎で6〜7割

本人が覚えている当日の手応えです。併願した4校のなかでも難しかったという感想でしたが、中身は科目ごとにかなり割れています。

選択した科目 当日の手応え(2014年・本人談)
経済史 4〜5問のうち完答できたのは1問だけ。残りは部分点を拾いにいった
統計学 出題は基礎的で、学部1年生レベルが分かっていれば6〜7割は取れる感触
ミクロ・マクロ経済学 個別の記憶はなし。筆記全体で6割くらいの手応えで面接に進んだ

「阪大は難しい」で一括りにすると見落としますが、科目によって要求水準はまるで違いました。統計学のように、基礎を落とさなければ計算できる持ち点になる科目もあります。そして全体6割で筆記を通過しています。満点を取りにいく試験ではなく、取れる科目を確実に拾う試験だった、という読み方ができます。

この構図は、当日筆記がEREに置き換わった今も無関係ではありません。EREもミクロ・マクロの全分野から出る検定です。難問を1問取りにいくより、基礎の取りこぼしを減らすほうがスコアに効くという点は、形式が変わっても共通しています。

面接|筆記を通った人だけが進み、面接官は7人いた

ここが当メディアで唯一の、編入試験の面接を実際に受けた記録です。まず形式から。

進み方 筆記試験に合格した人だけが面接に進む。筆記とは別の日
時間 20分程度
面接官 7人が横並び。非常に緊張したという
流れ 自己紹介と志望動機から入り、そこから研究テーマの深掘り経済学の勉強のやり方へ。最後は雑談のような質問で終了

注目したいのは、「絞ってから面接する」というやり方が10年以上変わっていないことです。当時は筆記で絞り、今は書類(ERE・英語スコア・希望調書)で絞る。変わったのは絞り方であって、最後に口頭で確かめるという設計は同じです。書類選考を通ったあとに何が待っているかを考えるうえで、この面接の中身は今でも参考になります。なお締めの雑談では、専門学校で何を勉強していたのかという編入元の話も出ています。

面接で「経済学をどう勉強してきたか」まで問われた

志望動機のあと、深掘りは関心の出どころ・調べた範囲・入学後にやりたいことの3方向に及びました。とくに関連する論文を読んだかどうかまで踏み込まれています。テーマを決めただけでは答えられない質問で、志望理由書を書く段階で一度は論文に当たっておく必要があります(書き方の手順は大学編入の志望理由書の書き方)。

そしてもうひとつ、志望動機とは別枠で勉強のやり方そのものを問う質問が入っていました。回答はこうです。

吉川 恭輔吉川 恭輔神戸大学 経済学部 編入

実際に自分が行ってきた学習方法を伝えました。各科目ごとに、具体的に使用した教材も伝えました。あわせて、同じ参考書を何度もやったり、自分で紙にグラフを書いたりして、他の人に説明できるレベルで身につけようとしました、という内容を話したと思います。

この質問は面接直前の準備では埋まりません。使った本の名前と、その本をどう回したかをその場で言えるのは、実際にそう勉強してきた人だけだからです。EREのスコアで書類を通過したあと、最後にその中身を口で確かめられる——そう考えると、日々の進め方そのものが選考の材料になっていると分かります。教材の選び方と回し方は編入試験の経済学の勉強法で具体的に書いています。

出た質問の全文と、滋賀大の面接(面接官3人)との比較は面接・口頭試問対策のほうで扱いました。


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大学編入の面接・口頭試問対策|頻出質問と答え方

対策の進め方

① EREを早く始め、Aランクを目指す

ほぼ毎日受けられるCBTの強みを活かし、早い段階から受験サイクルを回します。ミクロ・マクロを教科書から固め、対策問題集で形式に慣れ、出願までにベストスコア(Aランク目安)を作るのが第一関門です。

② 英語スコアを確定させる

TOEIC・TOEFL・IELTSのいずれか1種を、出願時までに有効な形で用意します。英語は伸ばすのに時間がかかるため、EREと並行して早めに着手します。

EREと並行して英語も動かすので、時間の配分が最初の壁になります。英語だけに3か月を使った場合の分量は、別の記事で確認できます。


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編入のTOEICを3か月で440→860にした記録|使った本と周回数

③ 口頭試問と希望調書を一貫させる

二次の口頭試問は書類選考合格者のみが対象で、希望調書をもとに、経済学の理解と志望動機が問われます。「阪大経済で何をどう学びたいか」を、EREで培った経済学の知識に裏打ちされた言葉で語れるように準備しましょう。口頭試問の考え方は編入の面接・口頭試問対策が参考になります。なお2014年の面接では、志望動機の深掘りに加えて「どうやって経済学を勉強したのか」まで問われています(上の実例を参照)。希望調書の内容だけでなく、ここまでの勉強の進め方も言葉にできる状態にしておいてください。

併願の組み方|EREと発表時期をどう扱うか

阪大を併願に組み込むとき、効いてくるのは日程よりも準備がどれだけ他校と重なるかと、結果が出る時期の2つです。

なお出願書類に使う英語のスコア証明書は、紙の原本を出すと戻ってきません。複数校に出すなら予備を含めて手配しておいてください(枚数の目安は名古屋大学 経済学部 編入に運営者の実例で書いています)。

EREは阪大専用の投資になる

準備の重なりという観点では、阪大には明確な特徴があります。経済学検定試験(ERE)を課すのは、経済系9校のなかで阪大だけだという点です。

ERE 阪大専用(他8校では不要)
数学 神戸大専用
TOEIC・経済学の基礎 ほぼ全校で使い回せる

ただしERE対策そのものはミクロ・マクロの学習と重なるので、完全な無駄にはなりません。同じくEREを課す関西大商と組み合わせれば、対策を二重に活かせます。

結果が出るのは12月7日と遅い

もうひとつ、精神面で効いてくるのが発表時期です。阪大の最終合格発表は12月7日。書類選考の結果が11月13日、口頭試問が11月26日と、選考自体が長期戦になります。

阪大だけ、あるいは阪大と名大(11/11発表)だけで組むと、11月まで結果がひとつも出ません。10月中に発表がある同志社商(10/16)や滋賀大(10/23)を1校入れておくと、11月26日の口頭試問を落ち着いて受けられます。


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編入試験に落ちたらどうなる?併願パターンと出願戦略【2027年度カレンダー】

一人だと「出願前の完成度」を見誤る

阪大経済の編入は、出願の時点でERE・英語・書類が高い水準に達している必要があります。正直に言えば、独学だと「今の自分のERE(何ランク)で書類選考を通過できるのか」を客観的に判断しづらいのが難しいところです。基準が読みにくいからこそ、経験者の視点で仕上がりを点検する価値があります。

当メディアの運営者は、専門学校から神戸大学・名古屋大学の経済学部へ編入した経験者で、関西の国立経済の編入事情に通じています(運営者プロフィールはこちら)。阪大を含む併願の組み方から、ERE・英語・口頭試問の進め方まで、一緒に組み立てるところから始めましょう。

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