「編入の専門科目って、経済学を独学でどこまでやればいいの?」「ミクロとマクロ、何から手をつければ間に合う?」——。編入を決めた人が次にぶつかるのが、この専門科目の壁です。市販の教科書は山ほどあり、どれを・どの順で・どこまでやるべきかが見えないまま、時間だけが過ぎてしまいがちです。

そこで編入試験の経済学(ミクロ・マクロ)を独学で仕上げるためのロードマップを、教科書選びから過去問の使い方まで具体的に組み立てました。先に結論を言うと、編入の経済学は範囲が読みやすく、正しい順序で積み上げれば独学で十分に戦える科目です。当メディアは専門学校から神戸大学・名古屋大学の経済学部へ編入した2名が運営しており、うち一人は経済学・経済数学を得意分野として神戸大へ編入しています。その経験から、遠回りしない進め方をお伝えします。

この記事の要点

  • 編入の経済学はミクロ・マクロが中心。範囲が絞りやすく独学に向く科目
  • 進め方は「入門で全体像→標準教科書で理解→問題演習→過去問」の順が鉄則
  • まず1冊を薄く何周もするのが正解。厚い本を最初から完璧に読むのは失敗パターン
  • 経済数学は微分・最適化まで押さえれば足りることが多い。出題範囲は志望校の過去問で確認

編入の経済学は「独学で戦える」科目

英語(TOEIC等)と違い、専門科目は「短期間で仕上げにくい」と身構える人が多いのですが、実は経済学は編入の中でも独学しやすい科目です。理由は3つあります。

  • 出題範囲が読みやすい:多くの大学でミクロ・マクロの標準的なテーマから出題され、奇問は少ない
  • 良質な教科書が揃っている:定番書が確立していて、独学でも理解の道筋を作りやすい
  • 積み上げが得点に直結する:一度理解した論点は安定して得点源になり、努力が裏切りにくい

裏を返せば、経済学はやった人としっかり差がつく科目でもあります。英語で足切りを越えたあと、合否を最終的に分けるのはこの専門科目です。だからこそ、早い段階で全体像をつかんでおく価値があります。どの大学がどのレベルで出題するかは、大学別の編入情報経済学部に編入できる大学一覧を突き合わせると見えてきます。


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経済学部に編入できる大学一覧|国公立中心

出題の全体像|ミクロ・マクロ・計算・論述

まず、編入の経済学がどう問われるのかを整理しておきましょう。大学によって配点や形式は異なりますが、大きくは次の4要素の組み合わせです。

分野・形式 問われ方 対策の重心
ミクロ経済学 需要供給・消費者/生産者理論・市場・ゲーム理論など 図とグラフで動きを理解し、計算で仕上げる
マクロ経済学 GDP・IS-LM・AD-AS・財政金融政策など モデルの因果関係を言葉で説明できるように
計算問題 最適化・均衡の導出・弾力性など数式処理 典型パターンを手を動かして反復
論述問題 用語説明・政策効果の記述(大学により有無) キーワードを自分の言葉でつなぐ練習

難関国立ほど計算・論述の比重が上がり、中堅校ほど基本問題中心という傾向はありますが、あくまで目安です。形式・範囲・配点は必ず志望校の最新の募集要項と過去問で確認してください。逆に言えば、過去問さえ手に入れば「どこまでやればいいか」の上限が見えるため、無限に不安を抱える必要はなくなります。

経済学 独学ロードマップ|3ステップ

教材選びで迷う人が多いですが、順番は決まっています。まず遠回りしない3ステップを示します。運営者2人が実際に使った本は、この記事の後半にそのまま載せました。

① 入門書で「全体像」を1〜2週間でつかむ

最初から分厚い標準教科書に入ると、多くの人が挫折します。まずは図解の多い入門書やまんが・講義系の本を1冊、細部は飛ばして通読し、ミクロ・マクロが「何を扱う学問か」の見取り図を頭に入れます。石川秀樹『試験攻略 新・経済学入門塾』や、らくらく経済学入門系の平易な本は、独学者が全体像をつかむ入口として定番として挙げられます。ここは完璧主義を捨て、7割わからなくても先へ進むのがコツです。

② 標準教科書で「理解」を固める

全体像が入ったら、標準的な教科書で腰を据えて理解します。ミクロは芦谷政浩『ミクロ経済学』や神取道宏『ミクロ経済学の力』、武隈慎一の教科書、マクロは中谷巌『入門マクロ経済学』や二神孝一・堀敬一『マクロ経済学』などが定番として広く読まれています。ここでの目標は暗記ではなく、グラフがなぜそう動くのかを自分の言葉で説明できる状態です。1冊を決めたら浮気せず、薄く何周もするのが独学の鉄則です。

③ 問題演習と過去問で「得点力」に変える

理解したつもりでも、手を動かすと解けないのが計算問題です。武隈慎一『演習ミクロ経済学』などの演習書で典型問題を反復し、そのうえで志望校の過去問に進みます。過去問は「腕試し」ではなく、出題範囲とレベルを測る土台として、早めに一度目を通しておくのが正解です。過去問の入手方法や使い方は編入試験の過去問の入手方法と使い方にまとめました。

ミクロ経済学の進め方

ミクロは図(グラフ)で理解して計算で仕上げる科目です。消費者理論(効用最大化・需要曲線の導出)、生産者理論(費用曲線・利潤最大化)、市場均衡、余剰分析、独占・寡占、そしてゲーム理論あたりが頻出テーマです。多くの受験生がつまずくのは「無差別曲線と予算制約から需要を導く」あたりですが、ここは図を自分で何度も描くことで一気に腑に落ちます。読むだけでなく、白紙にグラフを再現できるかを毎回チェックしてください。

マクロ経済学の進め方

マクロはモデルの因果関係を言葉でたどれるかが勝負です。GDPの三面等価から始まり、45度線分析、IS-LM分析、AD-AS分析、財政・金融政策の効果、開放経済(マンデル=フレミング)へと積み上がります。IS-LMでつまずく人が多いのですが、「金利が上がると投資が減る→総需要が減る」といった一つひとつの矢印を口で説明できるようにすると、論述にも計算にも強くなります。ミクロを先に固めてからマクロに入ると、限界概念や最適化の考え方が共通するため理解が速く進みます。

運営者2人が実際に使った本|独立に選んで、重なったのは2冊だった

ここからは一般論ではありません。当メディアの運営者2人が、それぞれ別の大学を受けて別の年に合格したときに、実際に使った本です。片方は名古屋大学、もう片方は神戸大学へ編入しています。

分野 直野(名古屋大学) 吉川(神戸大学)
入門 らくらく経済学入門たまご(茂木喜久雄)。全体像の把握用
ミクロ 新・らくらくミクロ経済学入門(10周以上)
芦谷政浩『ミクロ経済学』(10周)
らくらくミクロ経済学
芦谷政浩『ミクロ経済学』
らくらくミクロマクロ経済学 計算編
(いずれも10回以上
マクロ 試験対応 新・らくらくマクロ経済学入門(10周以上)
中谷巌『入門マクロ経済学』(5周)
らくらくマクロ経済学
らくらくミクロマクロ経済学 計算編
公務員試験 スーパー過去問ゼミ マクロ経済学
(いずれも10回以上
その他 公務員Vテキスト 経営学ほか(名大は経営学も出題範囲)

2人は同じ学校の同じコースにいましたが、受けた大学も年も違います。それでも重なったのは「らくらくシリーズ」と「芦谷政浩のミクロ経済学」の2冊だけでした。冊数を増やす方向ではなく、同じ本を10回以上まわすという点も一致しています。

並べてみて分かることがもうひとつあります。吉川は入門から計算演習まで、すべて「らくらく」シリーズで揃えています。入門の『たまご』からミクロ・マクロ、そして計算編まで同じ著者(茂木喜久雄)です。シリーズを揃えると用語の使い方もグラフの描き方も一貫するので、本を行き来したときに「同じ話なのに書き方が違う」で止まることがありません。独学で最初に消耗しやすいのがここなので、1冊目を選ぶときにシリーズごと決めてしまうのは実用的なやり方です。

ここから読み取れること

入門から中級まででよい 2人とも大学院レベルの専門書は使っていません。編入試験の経済学は「基礎的問題」と要項に書かれることが多く、そのとおりの準備で通っています
冊数ではなく周回数 分野ごとに2〜3冊。そのかわり10回以上。上の「1冊を決めて何周も回す」を、2人とも実行しています
違いは志望校の出題範囲から来る 直野に経営学の本があるのは名大の出題範囲に経営学が含まれるから。吉川にスーパー過去問ゼミがあるのは計算演習の量を確保するため

つまり選ぶ本は志望校の出題範囲で決まり、回し方は志望校によらず同じです。まず志望校の科目と過去問を見て範囲を確定させ、そこから分野ごとに2〜3冊に絞る。あとはそれを回数で仕上げる、という順番になります。

10周もすると答えを覚えてしまいますが、そこからが本番です。直野は途中で「解く」のをやめて「問題を見て口頭で自分に説明する」に切り替え、1周1時間まで短縮しています(名古屋大学 経済学部 編入に当時の周回の仕方を書きました)。吉川のほうは1日の勉強時間で経済学に3〜4時間を割いています(神戸大学 経済学部 編入に内訳があります)。

経済数学はどこまで必要か

「数学が苦手だから経済学は無理」と諦める人がいますが、編入の経済学で必要な数学は多くの場合限られた範囲です。目安として、次のあたりを押さえれば標準的な問題には対応できることが多いです。

使う数学 何に使うか
微分(1変数・偏微分) 限界効用・限界費用・利潤最大化などの最適化
制約付き最適化(ラグランジュ) 予算制約下の効用最大化など
連立方程式・グラフ 均衡の導出、IS-LMなどの交点計算

難関校では上記より踏み込んだ処理を求める場合もありますが、まずは微分と最適化を手に馴染ませることが先決です。数学に不安がある人は、経済数学の入門書(尾山・安田『経済学のための数学入門』などが定番)を並行して薄く回すと、専門科目の理解そのものが速くなります。どこまでの数学が問われるかも、最終的には志望校の過去問で判断するのが確実です。

独学でやりがちな失敗と、その回避

経済学の独学でつまずく人には、共通したパターンがあります。逆にこれを避けるだけで、同じ時間でも到達点が変わります。

失敗しやすい進め方 うまくいく進め方
教材 何冊も買って手を広げる 1冊を決めて何周も回す
読み方 1周目から完璧に理解しようとする 薄く通読→周回で精度を上げる
アウトプット 読むだけで手を動かさない グラフを描き、計算を反復する
過去問 直前まで見ない 早期に見て範囲と到達点を測る

特に多いのが「参考書コレクター」になってしまう場合です。不安から次々に新しい本へ手を出すと、どれも中途半端になります。準備を始める時期の全体像は大学編入はいつから準備すべき?学年別スケジュールで整理しているので、専門科目にいつ着手すべきかもあわせて確認してください。

英語と両輪で進めるのが編入の勝ち筋

経済学の対策は大切ですが、専門だけに偏るのも危険です。多くの経済系学部は英語(TOEIC等)で先に足切りをかけるため、スコアが足りなければ専門科目を採点してもらえません。英語は短期間で上げにくいぶん早く着手し、専門と並行で進めるのが理想です。実際、当メディアの運営者の一人は3か月でTOEICを440点から860点まで引き上げ、名古屋大の経済学部へ編入しています(編入の英語対策|TOEICは何点必要か)。制度そのものを先に押さえたい人は大学編入とは?もあわせてどうぞ。

一人だと「範囲と深さ」が読めない

正直に言うと、経済学の独学で一番難しいのは理解そのものより「どこまでやれば志望校に届くのか」の見極めです。過去問を見ても、初学者のうちは「この問題が難しいのか標準なのか」すら判断できません。結果として、必要ない範囲を深掘りしすぎたり、逆に頻出テーマを薄いまま本番を迎えたりしがちです。

逆に、やるべき範囲と深さが決まっていて、毎週の課題が明確な状態さえ作れれば、経済学は着実に得点源になります。当メディアの運営者は経済学・経済数学を強みに専門学校から神戸大・名古屋大の経済学部へ編入しており、まさにこの「範囲と深さの見極め」を伴走できます(運営者プロフィールはこちら)。「今の進め方で合っているか」を確認したい段階でも構いません。

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