編入試験で経営学を勉強しようと思ったら、参考書を選ぶ前にやることがあります。そもそも、経営学で受けられる大学がどれだけあるのか。経済系の編入で「経営学」を試験科目に持っている大学を、2027年度(令和9年度)の募集要項で12校ぶん照合してみました。結果はこうです。

大学・学部 当日の専門科目 経営学
神戸大 経営 経営学・会計学・マーケティング論・経済学から2科目 選べる
関西大 商 商学・経営学・経済学・会計学から2科目 選べる
同志社 商 経済学・商業学・国際経済学・経営学・会計学から2題 選べる
名古屋大 「経済・経営に関する基礎的な問題」 科目名に含まれる
神戸大 経済 数学・経済学 なし
大阪大 ERE+書類 → 口頭試問 なし
東北大 TOEIC → 経済数学・経済学 なし
京都大 TOEFL+書類 → 口述試験 なし
横浜国立大 経済学Ⅰ・Ⅱから1科目 なし
滋賀大 書類 → 面接 なし
龍谷大 経済 経済学・英語・面接 なし
近畿大 経済 英語・経済学の基礎テスト・口頭試問 なし

経営学で受けられるのは3校だけです。しかも3校とも「複数科目から2つ選ぶ」形式で、そのどれもが選択肢に経済学を持っています。この構造が、経営学をいつ・どこまでやるかを決めます。

この記事の要点

  • 経営学が試験科目にあるのは神戸大経営・関西大商・同志社商の3校。国公立は神戸大経営だけ
  • 3校とも2科目必要なので、経営学だけでは受けられない。経済学に足す2科目目として効く
  • 1科目仕上げれば3校で使い回せる。専門科目は共通で、違うのは英語要件のほう
  • 運営者の実測は1周目に1か月、2周目以降は2日で1周。重いのは最初の1周だけ

経営学で受けられるのは3校。国公立は1校だけ

この表からは、志望校によって経営学の価値がまるで変わることが分かります。順に開いていきます。

国公立で経営学が使えるのは神戸大の経営学部だけ

国公立の経済系を並べると、神戸大 経済は数学と経済学、横浜国立大は経済学Ⅰ・Ⅱから1科目、東北大は経済数学と経済学。大阪大京都大滋賀大には当日の学科筆記自体がありません。

経営学が正面から出てくる国公立は、神戸大学 経営学部ただ1校です。要項にはこう書かれています。

経営学,会計学,マーケティング論及び経済学の4科目から2科目を試験場で選択してください。
(令和9年度 神戸大学経営学部 第3年次編入学学生募集要項)

学科名と試験科目は別物

ここで引っかかりやすいのが、学科の名前に「経営」が入っていても、試験に経営学が出るとは限らないことです。

大学 募集している学科 当日の試験科目
東北大 経済学科・経営学科あわせて20名 第2次は経済数学と経済学。経営学は出ない
名古屋大 経済学科・経営学科あわせて10名 「経済・経営に関する基礎的な問題」分野の内訳は要項に記載なし

東北大は経営学科を募集していますが、第2次選抜の筆答は経済数学と経済学です。経営学を仕上げても、この試験では使いどころがありません。

名古屋大は少し事情が違って、科目名が「経済・経営に関する基礎的な問題」という括りになっています。経営が科目名に入っている以上、出る可能性はあります。ただし要項に分野の内訳は書かれていません。何がどこまで出るかは、過去問を取り寄せて確認するしかありません(過去問の入手方法)。

いずれにせよ、学科名を根拠に「経営学が要る」と判断すると外します。見るのは学科名ではなく、要項の試験科目の欄です。

経営学だけで受けられる大学は、ひとつもない

3校をもう一度見てください。全部が「2科目」を求めています。

大学 選択肢 必要な数
神戸大 経営 経営学/会計学/マーケティング論/経済学 4つから2科目
関西大 商 商学/経営学/経済学/会計学 4つから2科目
同志社 商 経済学/商業学/国際経済学/経営学/会計学 5つから2題

つまり経営学1本で出願できる大学は存在しません。どこを受けるにしても、もう1科目が要ります。そして3校とも、その選択肢に経済学が入っています。

経営学は「2科目目」として仕上げる

ここまでの構造から、順番が決まります。1科目目は経済学、2科目目に経営学。逆ではありません。

理由は単純で、経済学は12校ほぼ全部で使えるのに対し、経営学が使えるのは3校だけだからです。経済学を仕上げれば国公立の本命も私立の受け皿も射程に入りますが、経営学を先に仕上げても出願できる大学は増えません。積む順番を間違えると、時間の割に選択肢が広がりません。


次に読む
編入試験の経済学の勉強法|ミクロ・マクロ独学ロードマップ

1科目作れば、3校で使い回せる

そのうえで、経営学には効率のいい性質があります。3校の専門科目が共通なので、1回仕上げれば3校ぶんの2科目目になります。

むしろバラバラなのは英語のほうです。

大学 英語の扱い 基準
神戸大 経営 TOEFL・TOEIC・IELTSから選べる。100点に換算 基準点なし(高いほど有利)
関西大 商 出願資格。当日の英語試験はなし TOEIC L&R 630点以上または英検準1級以上
同志社 商 出願資格。当日の英語試験はなし TOEIC L&R 650点以上/TOEFL iBT/IELTS 5.5

専門は1回でいいのに、英語は650点を取らないと3校のうち1校に出せません。経営学に時間を使う前に、まず英語の到達点を確認してください。ここが届いていないと、専門をどれだけ仕上げても出願の段階で止まります(経済系の英語要件を8大学で照合した一覧)。

2科目目は経営学か、会計学か

2科目目の候補は経営学だけではありません。3校とも会計学が選べます。どちらを選ぶかは、性質の違いで決めます。

経営学 会計学
中身 理論・学説・人名が中心 計算と処理が中心
伸び方 覚えた量がそのまま点になりやすい 処理の正確さが要る
経済学との距離 別分野。ゼロから積む 別分野。ゼロから積む
同志社商での扱い 計算機は使えない 会計学を選択した者だけ計算機の使用が認められる

同志社大学の受験時の注意事項に「ただし商学部の商学に関する学力試験で『会計学』を選択した者には計算機の使用が認められます」とあります。
(2027年度 同志社大学 転入学・編入学試験要項)

大学が科目ごとに持ち物のルールを変えている、というのは、それだけ試験の中身が違うということです。暗記で押せるのが経営学、計算で押すのが会計学と考えると、自分の得意な方向で選べます。以下は経営学を選んだ場合の話です。

テキスト1冊を10周するまで

経営学は、編入向けの参考書がほとんど出ていない科目です。何を1冊目にするかで止まる人が多いので、実際に仕上げた手順を出します。名古屋大学へ編入した直野の記録です。

※直野が受験したのは名古屋大学と東北大学で、神戸大学経営学部は受けていません。当時(2014年)はどちらも試験範囲に経営学が入っていたため、そのために仕上げたものです。各校の出題傾向を保証するものではありません。また会計学には手を出しておらず、マーケティングは本を読んだ程度です。以下で扱えるのは「暗記中心の科目を独学でどう作るか」という手順の部分だけになります。

使った教材は、実質1冊

段階 教材 扱い方
土台 『公務員Vテキスト13 経営学』(TAC公務員講座 編) この1冊を丸ごと覚える。ここで基礎が完成する
その後 『ゼミナール経営学入門』ほか、経営学・マーケティングの書籍を数冊 土台ができてから広げる。覚えようとせず読むだけ
公務員Vテキスト13 経営学(TAC公務員講座 編)の表紙
直野が実際に使った『公務員Vテキスト13 経営学』(TAC公務員講座 編・TAC出版)。2014年当時のもので、現在は改訂版が出ています

公務員試験用のテキストを土台にしているのが要点です。編入向けの経営学の参考書は選択肢が少ない一方、公務員試験には経営学という科目があり、テキストと問題集が揃っています。出題の水準も学部の基礎レベルなので、そのまま流用できます。

テキストの下線から、一問一答を逆算して作る

直野 史明直野 史明名古屋大学 経済学部 編入

B5のノートを半分に折って、左に問題、右に○×をつけていく形です。テキストの下線を引いた部分を答えにして、その答えになるような質問を左半分に書く

1周目は答えられない。2周目もダメ。3周目で答えられたなら、××○みたいに右側へ記録していきます。

市販の問題集を買うのではなく、自分が覚えたい一行から質問を逆算して作るのがこのやり方です。実際のノートは、こうなります。

ノートの左半分(問題) ノートの右半分
バーナードが挙げた、組織が成立するための3要素は ××○
協働体系とは何か ×○○
アンゾフの多角化戦略の4分類は ×××
範囲の経済性とは何か ××○

効いてくるのが右半分です。○×が周回ぶん横に並ぶので、どの項目が何周目で入ったかが一目で分かります。「××○」が並んでいる行はもう入った行、「×××」のままの行は残っている行。次に開いたとき、どこを見ればいいか迷いません。

テキストにマーカーを引き直す作業との差はここです。読み返すだけでは「覚えたつもり」を検出できません。問いの形にして、答えられたかどうかを記録すると、できていない場所だけが残ります。

10周するのにかかった時間

暗記型の勉強で一番読めないのが、必要な時間です。実測はこうでした。

かかった時間 やっていること
1周目 1日2〜3時間 × 約1か月 ノートを作りながら進むので、ここが一番重い
2周目以降 2日で1周 問題に対して声で答えるだけ。書かない
10周した時点 テキスト1冊の内容はほぼ理解している状態

見てほしいのは1周目と2周目以降の落差です。1か月かかったものが、2日で回るようになります。重いのは最初の1周だけで、そこを終えると周回コストが一気に下がる。

裏を返すと、1周目の1か月を見て「終わらない」と判断して投げるのが一番もったいないです。ノートを作り終えた時点で、この科目の重い部分はもう終わっています。2周目からは通学時間にも回せます。

なぜ問題演習ではなく暗記なのか

直野 史明直野 史明名古屋大学 経済学部 編入

基本書を丸ごと覚えたら、他にも応用が効くと思ったからです。いろいろな問題を解くより、力技で覚えてしまったほうが早い。

実際、このVテキスト1冊を覚えてからは、他の参考書がとてもすらすら入ってきました。覚えようとしなくても、読むだけで内容が入ってくる状態です。

1冊を完全に入れると、2冊目以降が「新しい知識」ではなく「知っていることの言い換え」に変わります。だから2冊目からは覚える作業が要らなくなる。複数の本を並行して薄く回すのとは、順番が逆です。

経営学は理論と学説の科目なので、この性質が特に強く出ます。バーナードもアンゾフも、どの本にも出てきます。1冊で押さえてしまえば、あとは表現の違いを見ているだけになります。

いつ始めるか

1周目に1か月、と分かっているので逆算できます。

時期 やること
まず最初 英語。TOEIC 650点に届かないと同志社商には出せない。専門より先
試験の5〜6か月前 経済学を1科目目として積む。ミクロ・マクロの基礎
試験の3〜4か月前 経営学の1周目。テキストを読みながら一問一答ノートを作る(約1か月)
試験の2か月前〜 2日1周のペースで回す。経済学の仕上げと並行できる
直前 過去問で出題の形式と水準を確認する

ノート作りの1か月を、経済学がいちばん重い時期と重ねないのがコツです。経営学は「作る時期」と「回す時期」で必要な体力がまったく違うので、作る時期だけ先に確保してしまえば、あとは他の科目の隙間に入ります。

まとめ|経営学に手を出すべき人

最後に、ここまでを判断できる形にまとめます。経営学の勉強を始める価値があるのは、次のどれかに当てはまる人です。

当てはまる人 理由
神戸大 経営を受ける 経済学+経営学の2科目で出願できる。国公立で経営学が使える唯一の学部
関西大 商同志社 商を受ける 同じ2科目がそのまま使える。3校が1回の準備で射程に入る
名古屋大を受ける 科目名に「経営」が入る。範囲は要項に書かれていないので過去問で確認したうえで判断
上記以外の国公立が本命 やらなくていい。経済学と英語に回したほうが点になる

経営学は、やれば効く人と、やっても1点にもならない人がはっきり分かれる科目です。まず志望校の要項の試験科目の欄を見て、自分がどちらかを確かめてください。その1行を読むだけで、1か月ぶんの勉強が要るか要らないかが決まります。

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