2013年3月、吉川恭輔は大学受験に落ちました。高校3年生の終わりです。
浪人以外の進路は考えていませんでした。もう1年やり直して、同じ試験をもう一度受ける。ほかに道があるとは思っていなかったそうです。編入という制度を知ったのは、そのあと偶然見た広告でした。
2年後の2015年4月、吉川は神戸大学経済学部の3年次に編入しています。この記事は、その2年間に何をどれだけやって、4つの大学で何が起きたのかをまとめたものです。
当メディアを運営している2人のうち、名古屋大学へ編入した直野については大学中退から名古屋大学経済学部へに本人が書いています。こちらは神戸大学へ編入した吉川のほうの記録です。
⚠️受験したのは2014年です。当時と現在では試験の中身が違う大学があります。とくに神戸大学の英語は、当時は当日の筆記試験でしたが、現在はTOEIC L&R のスコアを100点に換算する方式です。この記事では当時の話と現在の要項を分けて書いています。出願する人は必ず最新の要項を確認してください。
吉川本人の言葉は、それぞれの話題を扱っている記事に吹き出しの形で置いてあります。この記事では経路をつなぐことに絞り、該当する記事へのリンクを各所に置きました。なお本人の希望により、通っていた専門学校の名前は出していません。
浪人しかないと思っていたところに、編入があった
吉川が編入に引かれた理由は2つでした。
- 浪人と違って、ストレートで卒業まで行ける
- 1年で複数の専門科目を学んだうえで、2年から本当に興味のある科目を選べる
1つ目は時間の話です。浪人すると、受験にもう1年使ったうえで大学1年に入ります。編入なら専門学校の2年間がそのまま進んで、3年次に移ります。卒業する年齢が変わりません。
2つ目は、高校3年の段階で学部を決め切らなくていいということです。吉川は専門学校の1年目に複数の専門科目に触れてから、2年目に経済学を選んでいます。
このあたりのきっかけは専門学校から大学編入する方法に本人の言葉で載せています。
専門学校の2年間|1日に何時間やっていたか
吉川から聞き取った学習時間の記録です。授業と課題をこなしたうえで、自分の勉強に使っていた時間です。
| 時期 | 英語 | 経済学 | 数学ほか |
|---|---|---|---|
| 1年(専攻を決める前) | 2〜3時間 | — | — |
| 2年(経済学に決めた後) | 2時間 | 3時間 | 数学30分 |
| 夏休みと試験直前(授業が減る時期) | 2時間 | 4時間 | 数学・統計学・経済史で1時間 |
この表で目を引くのは、1年目に経済学を1時間もやっていないことです。やっていたのは英語だけで、しかも2〜3時間と、2年目より多くなっています。
2年目に入って経済学が3時間になってからも、英語は2時間で残り続けています。専攻が決まる前から決まった後まで、英語だけは一度も止めていません。
これは当時の試験の作りと合っています。吉川が受けた4校は、どこも英語を課していました。科目の組み合わせは大学ごとに違っても、英語だけは全部に出てきます。
いまは当日の筆記ではなくTOEICやTOEFLのスコアを出させる大学が増えましたが、早く始めるほど積み上がるという性質は変わっていません。むしろスコア提出は出願の時点で決着するので、早く動いた人がそのまま有利になります。
使った本と、繰り返した回数
経済学で使った本です。
| 用途 | 使った本 |
|---|---|
| 全体像をつかむ | らくらく経済学入門たまご |
| ミクロ(10回以上繰り返し) | らくらくミクロ経済学/らくらくミクロマクロ経済学 計算編/芦谷政浩 ミクロ経済学 |
| マクロ(10回以上繰り返し) | らくらくマクロ経済学/らくらくミクロマクロ経済学 計算編/公務員試験用 スーパー過去問ゼミ マクロ経済学 |
数学は、大学受験で使っていたので苦手意識がなかったそうです。試験には微分積分と線形代数が要りました。
| 順番 | 使った本 |
|---|---|
| 先に軽く読む | 石村園子『やさしく学べる微分積分』と、同じシリーズの線形代数 |
| そのあと | マセマ(スバラシク実力がつくと評判の)微分積分/線形代数 |
数学については、吉川が1つ条件を付けています。全部やるとオーバーワークになるので、過去問を見て明らかに要らない部分はやらなかったということです。
本の数だけ見ると多く見えますが、ミクロとマクロは同じ本を10回以上繰り返しています。新しい本を足していく進め方ではありません。この繰り返し方については同じ参考書を繰り返す理由で、本人が「白紙の紙を渡されたら再現できるレベルまで」と話しています。
次に読む編入試験の経済学の勉強法|ミクロ・マクロ独学ロードマップ
2014年秋、4校を受けた
ここがこの記事の中心です。同じ人が同じ年に4校を受けて、科目ごとに手応えがどう違ったかを並べます。
| 大学 | 当時の科目 | 本人の手応え | 結果 |
|---|---|---|---|
| 同志社大学 経済学部 | 英語・経済学 | 経済学は分からなかった問題がほぼ1問もなし。英語は自信のない問題が数問 | 合格 |
| 神戸大学 経済学部 | 英語・数学・経済学 | 英語は9割。経済学も全体に手応えあり。数学は基本問題中心 | 合格(進学) |
| 大阪大学 経済学部 | 英語・ミクロマクロ経済学・統計学・経済史の4科目+面接 | 筆記全体で6割くらい。経済史は完答が1問だけ | ⚠️当メディアは聞いていない |
| 京都大学 経済学部 | 英語・経済学 | 和文英訳と英文和訳が非常に難しく6割程度 | 不合格 |
注:大阪大学の結果は本人に確認していないため、空欄のままにしています。推測で埋めていません。なお科目は2014年当時のもので、現在の要項とは異なります。
表から読み取れることが3つあります。
① 同じ英語でも、大学によって難しさがまるで違った
神戸大学で9割の手応えがあった同じ人が、京都大学では英語で6割と感じています。同じ年の、同じ受験生の話です。
違いは中身にあります。京都大学で出たのは和文英訳と英文和訳でした。読んで選ぶ試験と、訳して書かせる試験は別物です。英語ができるかどうかではなく、どの形式の英語かで結果が動いています。
いまの京都大学はTOEFLのスコアを使う方式に変わっています。つまり当時と現在では、測っている英語の中身が入れ替わっています。
次に読む京都大学 経済学部 編入の難易度・選考方法・対策【令和9年度】
② 科目が多い大学ほど、手応えが落ちている
4校を科目数の順に並べると、手応えの順番とほぼ一致します。
| 科目数 | 大学 | 手応え |
|---|---|---|
| 2科目 | 同志社大学 | ほぼ全問 |
| 3科目 | 神戸大学 | 英語9割・全体に手応えあり |
| 4科目+面接 | 大阪大学 | 全体6割 |
京都大学は2科目ですが手応えが6割で、この並びから外れています。科目数と難易度は別の軸です。科目が少ない大学が楽とは限りません。
それでも、4科目を同じ年に仕上げる負荷は数字に出ています。大阪大学で完答できたのは経済史4〜5問のうち1問だけでした。一方で統計学は「学部1年レベルが分かっていれば6〜7割」という感覚だったそうです。同じ1つの試験の中でも、科目ごとに届き方が違っています。
次に読む大阪大学 経済学部 編入の難易度・試験科目・対策【2027年度】
③ 受かった2校は、どちらも使っていた参考書の範囲だった
同志社大学で出た経済学の問題について、吉川は「全部らくらくシリーズに載っているもので、数字を変えて計算するだけで解けた」と話しています。
神戸大学の数学も同じ構図です。難しい問題は少なく、教科書の例題を人に説明できる状態まで持っていけば解き切れる内容だった、というのが本人の受け止め方です。
合格した2校で出たのは、2年間繰り返していた本の範囲の問題です。新しい本を足して範囲を広げた結果ではありません。
⚠️これは2014年の試験の話です。同志社大学は2027年度には経済学部で編入を実施しておらず、商学部が受け皿になっています。当時の出題を今の対策の根拠にはできません。
次に読む神戸大学 経済学部 編入の難易度・試験科目・対策【令和9年度】
面接があったのは4校のうち1校だけだった
4校のうち面接が課されたのは大阪大学だけです。他の3校は筆記のみでした。
大阪大学の面接について、吉川が覚えていることが2つあります。
- 面接官が7人、横並びで座っていた
- 最初に自己紹介。次に志望動機を聞かれ、そこを掘り下げられた。そのあと経済学をどう勉強したかを聞かれ、最後は緩やかな雑談で終わっている
掘り下げられたのは、志望理由に書いた教育経済学についてです。そのテーマを選んだ理由、関連する論文を読んだことがあるか、どんな研究をしたいのか。この3つを順に聞かれ、答えるたびにさらに質問が重なったそうです。
勉強方法を聞かれたときは、科目ごとに使った教材を挙げたうえで、同じ参考書を何度もやったこと、グラフを自分で紙に書いたことを話したと言っています。この記事の前半に出てきた勉強のしかたが、そのまま面接の答えになっています。
編入した後の2年|困ったのは授業ではなかった
2015年4月、吉川は神戸大学経済学部の3年次に入りました。専門学校で取った単位は60単位ほどが認定されています。
授業そのもので苦労した記憶はあまりないそうです。代わりに困ったことが1つありました。定期試験の過去問が手に入らないことです。
1年生から通っている学生には、先輩や同級生から過去問が回ってきます。3年次に入ると、その経路が最初からありません。本人の言葉では、単位が足りるかどうかより、こちらのほうが実際には効いたということでした。
編入を考えるときは単位認定の条件に目が行きますが、入った後に効くのは、情報が回ってくる経路を持っているかどうかでした。
次に読む編入の単位認定の仕組み|何単位持っていける?留年しない?
就職活動で、編入はどう扱われたか
専門学校から神戸大学へ編入したことについて、吉川は就職活動の前に不安を持っていました。経路が普通と違うので、不利に見られるのではないかという不安です。
実際にはマイナス要素にはならなかったと本人は言っています。むしろ専門学校からの編入が珍しいらしく、面接のたびに編入の話題が出たそうです。本人の受け止め方は「話題が1つ増えるくらいの感覚」でした。
受けた会社は日系の大手からベンチャーまで幅広く、決まったのは人材系のベンチャー企業でした。
⚠️これは1人の経験です。業界や企業によって受け止め方は違うはずなので、全員に当てはまる話としては読まないでください。
まとめ|2013年3月の吉川と同じ場所にいる人へ
2013年からの流れを、時間の順に並べます。
| 2013年3月 | 大学受験に不合格。浪人しかないと思っていた |
|---|---|
| 2013年4月 | 専門学校の編入コースへ。英語だけを1日2〜3時間 |
| 2014年 | 経済学を専攻に決める。英語2時間+経済学3時間+数学30分 |
| 2014年秋 | 4校を受験。同志社と神戸大に合格、京大は不合格 |
| 2015年4月 | 神戸大学経済学部の3年次へ。60単位が認定された |
いま大学受験に落ちたばかりの人、浪人するかどうかを決めかねている人が、この記録から取れるものは2つだと思います。
1つは、進路を決めるのに使える時間が、思っているより残っていることです。吉川が経済学を専攻に決めたのは専門学校の2年目です。3月の時点では学部も決まっていませんでした。
もう1つは、2年間ずっと続けたのは英語だけだったことです。経済学は専攻を決めてから始めています。最初から全部を並行させたわけではありません。
いま何から始めればいいか分からない状態なら、英語から始めるのが、この記録の示す順番です。どの大学を受けることになっても、英語だけは必ず使います。







