編入の募集要項に「小論文」と書かれていたとき、何を準備すればいいのか。この言葉は、大学によって指しているものが違います。

当メディアが経済・経営系の募集要項を読んだ範囲では、小論文を課しているのは6校でした。そのうち島根大学は「特には専門的知識を要しないもの」と要項に書いています。一方で琉球大学は「経営学に関する基礎問題」と書いています。同じ科目名で、要求されているものが正反対です。

つまり「小論文の書き方」を一般論で学んでも、志望校によっては的が外れます。この記事では、6校の要項が実際に何と書いているかを並べ、自分の志望校がどちらの型なのかを確かめる順番をまとめます。

この記事の要点

  • 経済・経営系で小論文を課すのは7校(島根・下関市立・富山・大分・岩手・琉球・和歌山)。長崎大学は「総合問題」という名前で近い形
  • ⚠️「小論文」が指すものが大学で違う。島根大学は専門知識が要らない、琉球大学と和歌山大学は経済学・経営学の知識を評価する
  • 配点は要項に出ている大学が多い。島根は小論文100+面接100、富山は英語100+小論文100+面接30、大分は英語100+小論文100+書類40
  • 準備の前にやることは1つ。志望校の要項で、小論文の中身がどう書かれているかを読む

経済・経営系で小論文を課すのは7校

当メディアが要項を取得して読んだ大学のうち、小論文を試験科目に入れていたのは次の7校です。長崎大学は科目名が「総合問題」ですが、問われ方が近いので併記します。

大学 要項が書いている小論文の中身 専門知識
島根大学 法文学部 法経学科 「社会科学分野を重視した一般教養で、特には専門的知識を要しないもの」 要らないと明記
大分大学 経済学部 「社会科学的素材に基づく出題」。理解力(大意把握力)・論理的思考力・表現力を評価 素材を読んで書く形
富山大学 経済学部 社会科学的な思考力と文章表現力、社会問題への関心度などを評価 素材を読んで書く形
下関市立大学 経済学部 「長文理解・図表理解」 読み取りが中心
岩手大学 人文社会科学部 外国語・小論文・面接(口頭試問を含む)・出願書類を総合して判定 要項に中身の記載なし
琉球大学 国際地域創造学部 「経営学に関する基礎問題」 要る
和歌山大学 経済学部 経済学科 「経済学・経営学などに関する知識とそれを活用する思考力・判断力・表現力」を評価 要る
(参考)長崎大学 経済学部 科目名は「総合問題」。「経済・社会に関する基礎的な問題」 経済系の基礎が要る

出典:各大学の2027年度(令和9年度)第3年次編入学の学生募集要項。当メディアが取得して読んだ範囲のもので、全国のすべての大学を調べたものではありません。出願前に必ず公式の最新版を確認してください。

「専門知識は要らない」と書く大学と、「経営学の基礎問題」が出る大学

表のいちばん上といちばん下を並べると、違いがはっきりします。

島根大学 法文学部 法経学科 琉球大学 国際地域創造学部
要項の言葉 特には専門的知識を要しないもの 経営学に関する基礎問題
何が要るか 社会の出来事への関心と、論理を立てて書く力 経営学の基礎知識
経済学を仕上げると 直接は点に結びつかない可能性がある そのまま効く

島根大学の対策として経営学の教科書を回すのは、おそらく的を外します。逆に琉球大学で一般的な小論文の型だけを練習しても、経営学の問題には答えられません。

この2校ほど極端でなくても、中間に幅があります。下関市立大学は「長文理解・図表理解」なので読み取りの比重が高く、大分大学と富山大学は社会科学の素材を読んで考えを書く形です。準備の中身は、志望校の要項の一文で決まります。

配点は要項に出ている大学が多い

小論文が合否にどれだけ効くかは、配点を見れば分かります。要項に書いてある大学と、書いていない大学があります。

大学 配点 小論文の比重
島根大学 法文学部 法経学科 小論文100+面接100=200点 半分。⚠️同点なら小論文の高得点者を上位にする
富山大学 経済学部 英語100+小論文100+面接30=230点 約43%
大分大学 経済学部 英語100+小論文100+提出書類40=240点 約42%。⚠️面接がない
長崎大学 経済学部 総合問題80+面接20=100点 8割。⚠️得点率30%未満で不合格
和歌山大学 経済学部 経済学科 小論文200+面接・出願書類400=600点 約33%
下関市立大学 経済学部 満点300(内訳は要項に記載なし) 不明
琉球大学 国際地域創造学部 外国語100+小論文100+書類と面接100=300点 約33%

島根大学と長崎大学は、小論文の出来がそのまま合否になります。島根大学は合計200点のうち100点が小論文で、しかも同点のときは小論文の点が高いほうが上位になります。長崎大学は100点中80点が総合問題で、さらに得点率30%未満だとその時点で不合格です。

一方で琉球大学は外国語と書類・面接にも配点があるので、小論文1本で決まる試験ではありません。同じ「小論文がある大学」でも、そこに賭ける時間の配分は変わります。

次に読む島根大学 法文学部 法経学科 編入の難易度・試験科目・対策【令和9年度】

自分の志望校がどちらの型かを確かめる手順

準備を始める前に、この順で確かめてください。

1. 要項の「試験科目」と「選抜方法」の両方を読む

科目名だけでは分かりません。別の場所に中身が書かれていることがあります。島根大学の「特には専門的知識を要しない」は、試験科目の表の備考欄に書かれていました。琉球大学の「経営学に関する基礎問題」は、試験時間割の括弧の中です。

要項を頭から読むのが面倒でも、「小論文」という語で検索して出てくる箇所は全部見てください。科目の表、選抜方法、試験時間割、アドミッションポリシー、注意事項。この5か所に分かれて書かれていることがあります。

2. 評価項目が書かれていないか探す

何を評価するかを書いている大学があります。大分大学は「理解力(あるいは大意把握力)、論理的思考力、表現力」。富山大学はもっと細かく、社会科学的な思考力、文章表現力、社会問題への関心の高さなど6つを挙げています。

ここに「知識」が入っていなければ、知識を増やす方向の勉強は優先度が下がります。読んで、組み立てて、書く。その練習に時間を回すほうが点になります。

3. 過去問を取り寄せる

要項の一文で型は分かりますが、字数も設問の形も分かりません。要約させるのか、賛否を書かせるのか、図表から傾向を読ませるのか。ここは過去問でしか確かめられません。

⭐和歌山大学は試験問題(小論文)を開示すると要項に書いています。開示の手続きがある大学は、同じ型の問題を自分で確かめられます。

次に読む編入試験の過去問の入手方法と使い方|請求手順と分析のコツ

専門知識が要らない型の進め方

島根大学・大分大学・富山大学・下関市立大学が、おおむねこちらです。

読む時間を先に確保する

この型は、課題文や図表を読んでから書きます。試験時間のうち、書く時間より読んで考える時間のほうが長くなることがあります。下関市立大学は10時から12時の2時間、島根大学も10時から12時の2時間です。

練習では必ず時間を計ってください。読む・構成を決める・書く・読み直す。この4つを試験時間に収める配分を、本番までに固めます。

社会科学の話題に触れる回数を増やす

要項が「社会科学的素材」「社会問題への関心度」と書いている以上、題材はそこから来ます。経済・労働・地域・財政・環境といった分野のニュースを、数字つきで読む習慣があると題材に戸惑いません。知識として覚える必要はなく、論点の形を知っておくだけで十分です。

図表が出る大学は手計算の練習を入れる

下関市立大学は「図表理解」が科目名に入っています。そして同じ要項に、電卓・定規・そろばん・グラフ用紙の使用は不正行為と書かれています。割合や増減を手で計算する前提です。練習も白紙でやってください。

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専門知識が要る型の進め方

琉球大学・和歌山大学と、長崎大学の総合問題がこちらです。

どの科目の基礎かを特定する

琉球大学は経営学、長崎大学は経済・社会と書かれています。経済学を仕上げても経営学の問題は解けません。まず要項の言葉どおりの科目を押さえてください。

和歌山大学は、一般編入学選抜の小論文で「経済学・経営学などに関する知識とそれを活用する思考力・判断力・表現力」を評価すると書いています。知識だけでも、書く力だけでも足りない形です。⚠️なお推薦編入学選抜のほうには小論文がありません(面接と出願書類で選考します)。

注:和歌山大学の令和9年度は、出願も試験も終了しています(一般は出願7月21〜23日・試験8月20日)。次年度を狙う人は、例年どおりなら春ごろに公開される令和10年度の要項で確認してください。

長崎大学の要項は、水準まで書いています。「経済系の学部2年次前期程度の基礎的学力」。到達点が示されている数少ない例です。

次に読む編入試験の経済学の勉強法|ミクロ・マクロ独学ロードマップ

知っているだけでは足りない

専門科目の筆記と違い、小論文は文章で説明させる形です。用語を覚えていても、まとまった文章に組み立てられないと点になりません。教科書を読んだあとに、白紙で論点を説明する練習を入れてください。

どの型でも共通してやること

やること 理由
時間を計って書く 読む時間の配分は、計らないと分からない
手で書く 当日は手書き。普段キーボードだと書く速度が合わない
第三者に読んでもらう 論理の飛びは自分では見つけにくい
遅刻の規定を見る ⚠️岩手大学は「試験開始後30分以内の遅刻に限り受験を認める」と要項に書いている

面接を併せて課す大学がほとんどです。島根大学は小論文と面接が同じ100点ずつ、岩手大学は面接に口頭試問が含まれます。小論文で書いた内容を口で説明させられる可能性があるので、書いた論点は話せるようにしておいてください。

次に読む大学編入の面接・口頭試問対策|頻出質問と答え方

まとめ|小論文で受けられる7校

専門科目を一から仕上げる時間がない人にとって、小論文で受けられる大学は現実的な選択肢になります。もう一度、候補として並べます。

大学 当日の構成 向いている人
島根大学 法文学部 法経学科 小論文2時間+面接 専門科目をやる時間がない人(要項が専門知識は要らないと明記)
下関市立大学 経済学部 小論文2時間+集団面接 英語のスコアがない人(提出も当日試験もない)
大分大学 経済学部 英語+小論文 面接が苦手な人(面接がない)
富山大学 経済学部 英語+小論文+面接 英語を点数に変えたい人
岩手大学 人文社会科学部 小論文+面接(口頭試問を含む) TOEICのスコアが手元にある人(475点以上で出願)
琉球大学 国際地域創造学部 外国語+小論文+面接 経営学を勉強してきた人
和歌山大学 経済学部 経済学科 小論文90分+面接 経済学・経営学を仕上げた人(⚠️令和9年度は終了済み)

最初にやることは1つです。志望校の要項を開いて、「小論文」と書かれている箇所を全部読んでください。専門知識が要るのか要らないのか、配点が何点なのか。そこが分かるまでは、参考書を買っても使い道が決まりません。

要項の書き方は大学ごとに違うので、読んでも自分の志望校がどちらの型なのか判断しづらいことがあります。

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