「大学選びに失敗した」と検索する人の多くは、それを自分の判断ミスだと思っています。ちゃんと調べなかった自分が悪い、安易に決めた自分が悪い、と。

この記事では、まずその前提を疑うところから始めます。あなたが「失敗」だと思っているものの正体は、判断ミスではない可能性が高いです。18歳の時点では、何を見て選べばいいのかが分からなかった。今大学に入ってこれを調べているあなたなら実感しているはずです。これを、大学4年生に聞いた調査データで確かめていきます。

そのうえで、やり直す方法があるのかを整理します。

この記事の要点

  • 大学選びで実際に調べたのは偏差値59.6%・立地62.9%。しかし4年生が振り返ると偏差値の重要度は36.6%まで下がる
  • 逆に「見ておくべきだった」が跳ね上がるのは就職率(+14.7)・学内の雰囲気(+12.1)・キャリア支援体制(+18.9)
  • つまり選び方を間違えたのではなく、選ぶ時点で何を見ればいいかを知らなかった。43.7%は就職も意識せずに選んでいる
  • 編入は「見るべき項目を知った状態でもう一度選べる」制度。18歳の自分より、いまのあなたのほうが上手に選べる

4年生が「本当は見るべきだった」と答えた項目

ここで役に立つ調査があります。就活を終えた大学4年生に対して、2つの質問を項目をそろえて並べたものです。ひとつは「志望校を検討するとき、実際に何を調べたか」。もうひとつは「大学生活を送ったうえで、選ぶ際にチェックすべきだと思うことは何か」。同じ項目で聞いているので、受験前の関心と、4年後の評価の差がそのまま取れます。

項目 実際に調べた チェックすべきだった
学べる内容 71.4% 75.2% +3.8
学校の立地・周辺環境 62.9% 58.2% −4.7
偏差値 59.6% 36.6% −23.0
学内の雰囲気 41.4% 53.5% +12.1
知名度 37.1% 29.2% −7.9
就職率・卒業生の就職先 30.4% 45.1% +14.7
カリキュラム・授業科目 25.1% 30.4% +5.3
学費・奨学金制度 17.4% 29.4% +12.0
取得できる資格 14.8% 21.8% +7.0
研究内容や卒論テーマ 12.7% 26.2% +13.5
部活動・サークル 12.7% 20.1% +7.4
海外留学制度 10.5% 18.6% +8.1
キャリア支援・就職サポート体制 5.6% 24.5% +18.9

出典:ディスコ キャリタスリサーチ/2022卒の就活経験者822人を対象、2021年12月実施「大学進学に関する調査」より作成。差は小数第2位で四捨五入。

偏差値だけが、大きく下がっている

この表で唯一、20ポイント以上も評価が下がっている項目があります。偏差値です。

受験生のときは59.6%が偏差値を調べていました。ところが4年間を過ごしたあとで「選ぶ際にチェックすべき」と答えたのは36.6%まで落ちます。同じように知名度も37.1%→29.2%へ下がっています。

つまり大学選びで最も一般的に使われている物差しが、経験者からは「そこまで重要ではなかった」と評価されているということです。多くの人が「偏差値で選んで失敗した」と感じるのは、個人の落ち度ではなく、こういう事情があるからです。

見落とされているのは「入ってからの中身」

逆に、評価が上がった項目を並べると性質がはっきりします。

キャリア支援・就職サポート体制 +18.9(5.6% → 24.5%)
就職率・卒業生の就職先 +14.7(30.4% → 45.1%)
研究内容や卒論テーマ +13.5(12.7% → 26.2%)
学内の雰囲気 +12.1(41.4% → 53.5%)

どれも入学してからの4年間と、卒業後の進路に直結する項目です。とくにキャリア支援体制は、受験時に調べていた人がわずか5.6%。20人に1人しか見ていません。

そして重要なのは、これらはパンフレットや偏差値表を眺めても分からないということです。学内の雰囲気は通ってみるまで分からず、就職サポートの実態は使ってみるまで分かりません。受験生の立場ではそもそも確認しづらい項目ばかりが、後から重要だったと分かる。

なぜ18歳の時点では選べないのか

同じ調査に、もう一つ気になる数字があります。「将来のキャリアや就職を意識して大学を選んだか」という質問です。

とても意識して選んだ 16.5%
やや意識して選んだ 39.8%
あまり意識しなかった 25.1%
まったく意識しなかった 18.6%

意識しなかった側の合計は43.7%4割超が、就職のことをほとんど考えずに進学先を決めています。

これを「意識が低い」と責めるのは酷だと思います。17〜18歳の時点で、自分が何の仕事に就きたいのか、そのために大学のどんな機能が要るのかを見通せる人のほうが少ない。判断材料も判断基準も持たないまま、締切だけが来る——それが大学受験という制度の実際です。

進路指導も、選ぶ基準を教えてくれていない

「ちゃんと相談すればよかった」と思う人もいるかもしれません。同じ調査は、高校の進路指導への満足状況も聞いています。

とても満足している 16.1%
やや満足している 35.8%
あまり満足していない 16.9%
まったく満足していない 8.3%
受けていない/覚えていない 23.0%

満足しているのは51.9%。裏を返すと、不満(25.2%)と「受けていない・覚えていない」(23.0%)を合わせて約半数が、進路指導では何を基準に選べばいいかを教わっていません。

この調査には、満足していない学生の自由記述も載っています。

高校時代は、大学合格=ゴールと考えていたが、人生の単なる通過点に過ぎず、もっと大局的に見た進路指導やアドバイスが欲しかった

学歴ではなく本当に何がしたいのかを対話する時間が必要だったと思う

(同調査の自由記述より)

「大学合格=ゴール」という枠組みのなかで選んでいる——これが、多くの人が置かれていた条件です。合格した先の4年間や、その先の進路まで考えて選べる環境が、当時はなかったわけです。

「失敗した」という言葉を、いったん置く

ここまでのデータをまとめると、こうなります。

あなたが使った物差し(偏差値・知名度・立地)は、当時いちばん手に入りやすい情報でした。そして経験者が「本当に見るべきだった」と挙げる項目は、当時のあなたにはそもそも見えなかったものばかりです。

これは判断ミスというより、持っている情報で最善を尽くした結果、後から基準が変わったという話です。同じ条件なら、多くの人が同じ選択をします。実際、調査では45.3%が「やり直せるなら別の大学を選ぶ」と答えています(この点は不本意入学がつらい人へで詳しく扱いました)。

ここを「自分が悪かった」で終わらせると、次の判断まで鈍ります。分けて考えましょう。


次に読む
不本意入学がつらい人へ|「そのうち慣れる」は本当かをデータで確かめる

「失敗」の中身は3種類ある

「大学選びに失敗した」と一言で言っても、何を間違えたのかは人によって違います。やることがまったく変わるので、ここを分けてください。

種類 感じ方 編入で解決するか
① 学部・分野を間違えた 学んでいる内容そのものに興味が持てない 解決する(学部を変えて編入できる)
② 大学を間違えた 分野は合っているが、環境・水準・就職実績が想定と違う 解決する(分野を保って大学を変えられる)
③ 大学に行く理由がなかった そもそも何のために通っているか分からない 解決しない

① 学部・分野を間違えた場合

興味が持てない分野を4年間続けるのは、かなりつらい選択です。この場合、編入は学部そのものを変える手段として使えます。文系学部から経済・経営系へ移る編入は珍しくありません。

ただし注意点があります。編入試験の専門科目は、編入先の分野で出題されます。経済学部に編入するなら、いまの学部で経済学を履修していなくてもミクロ・マクロを自力で仕上げる必要があります。分野を変える編入は、その分だけ勉強量が増えると考えてください。

② 大学を間違えた場合

学んでいる内容には納得しているが、環境や水準、就職実績が想定と違った。調査でもこれが最多のパターンで、学部については70.3%が「同じものを選ぶ」と答える一方、大学については50.7%しか「同じ」を選びません。

この場合の編入は分かりやすいです。いまの学部で積んだ単位と知識をそのまま活かして、大学だけを変えられます。専門科目の対策も、いま学んでいる内容の延長線上にあります。

③ 大学に行く理由が見つからない場合

正直に書きます。この状態で編入しても、たいてい解決しません。場所を変えても「何のために通うか」は付いてきません。

この場合に先にやるべきは、大学を変えることではなく「大学を出て何をしたいか」を一度形にすることです。そのうえで、それに大学が必要なら編入を考える。必要でないなら、別の道を検討したほうが早いこともあります。編入という手段の限界については大学編入は「やめとけ」か|割に合う人・合わない人の分かれ目にまとめました。

いまのあなたは、18歳のときより上手に選べる

ここがこの記事でいちばん伝えたいことです。

前半のデータをもう一度思い出してください。4年生が「チェックすべきだった」と挙げたのは、学内の雰囲気・就職率・キャリア支援体制・研究内容でした。受験生には見えなかった項目です。

では、いまのあなたはどうでしょうか。

大学生を1〜2年やった人にしか分からないこと

当時は分からなかったこと いまは分かること
学内の雰囲気 実際に通って肌で知っている。何が合わなかったかも言語化できる
カリキュラム・授業の中身 シラバスの読み方が分かる。「面白そうな科目名」との違いも知っている
就職・キャリア支援 先輩の進路を見ている。大学の支援がどの程度機能するかを実感している
研究内容・ゼミ 学びたい分野がだいたい決まっている。誰に何を学びたいかを具体的に言える

つまり編入は、経験者が「本当に見るべき」と答えた項目を実際に見たうえで、もう一度選び直せる制度です。18歳のときに持っていなかった判断の材料を、いまのあなたは持っています。

これは編入という手段の、あまり語られない利点だと思います。一般入試は情報のない状態で選ぶしかありませんが、編入は情報を持った状態で選べる。同じ「大学選び」でも条件がまるで違います。

目的を持って選び直すと、その後にも効く

もうひとつ、同じ調査に見逃せない連鎖があります。

学業への取り組み 就職先満足度の平均
かなり力を入れてきた 87.6%
それなりに力を入れてきた 84.2%
力を入れなかった 80.7%

そして、進学先を選ぶときに将来のキャリアを「とても意識した」グループを見ます。入学後に学業へ「かなり力を入れてきた」割合は27.2%で、全体の19.0%を大きく上回ります。調査はこう結論づけています。将来を意識して進路を選んだことで進学の目的が明確になり、学業への取り組み姿勢にもよい影響を及ぼしている、と。

つまり目的を持って選ぶ → 学業に身が入る → 就職先の満足度も上がるという流れが、データ上でつながっています。

編入は、この入口にもう一度立てる制度です。今度は目的を持って選べる。18歳のときにできなかったことが、いまならできます。

制度としての編入

3年次編入は、いまの大学で修得した単位を持ったまま、別の大学の3年生として入り直す仕組みです。落ちてもいまの大学に在籍したままなので、退学や仮面浪人と比べてリスクが小さいのが特徴です。仕組みの詳細は大学編入とは?仕組み・メリット・デメリットに、併願の組み方は編入試験に落ちたらどうなる?併願パターンと出願戦略にまとめています。

選び直すときのチェックリスト

最後に、判断の道具を渡します。データが示した「本当に見るべき項目」を、編入で大学を選ぶときの形に置き換えたものです。候補校を絞るときに、この順で確認してください。

① 学べる内容(最重要・75.2%)

調査で唯一、受験時も卒業時もトップだった項目です。誰の下で、何を学ぶのかまで具体的に。大学名ではなく、教員名とゼミの研究テーマで見てください。編入は3年次からなので、入学後すぐゼミが始まります。ここが噛み合わないと2年間が短く感じられます。

直野 史明直野 史明名古屋大学 経済学部 編入

私が2回目に大学を選んだときの基準は、まさにこの「学べる内容」でした。偏差値ではありません。

自分のやりたかった学問を学部(学士課程)で扱えるのが、調べた限り名古屋大学しかなかったんです。だからそこを受けました。この経緯は中退から名古屋大学へ編入するまでの記録にも書いています。

この選び方は、就職活動まで効きました。なぜその大学を選んだのか、大学で何をやったのかを、別々に用意しなくてよかったからです。やってきたことをそのまま話すだけで済んで、結果も出せました。

編入先を「学べる内容」から選ぶと、2年後に話すことが勝手に用意できます。

注目してほしいのは、この選び方だと志望校が「選ぶ」ものではなく「決まる」ものになるという点です。学びたい内容を先に定めると、それを扱っている大学は自然に絞られます。偏差値表を上から眺めて決めるのとは、順序がまったく逆です。

② 就職率・卒業生の進路(+14.7)

いちばん改善幅の大きい項目のひとつです。志望校の進路データを実際に開いてください。想像ではなく数字で確認する。いまの大学と並べて比較すると、編入する意味が数字で見えます。

③ 学内の雰囲気(+12.1)

いまのあなたは、この項目の重要性を身をもって知っているはずです。可能ならキャンパスに足を運んでください。編入生の受け入れ実績や、編入生がどう扱われるかも確認できると理想的です。

④ カリキュラム・授業科目(+5.3)

編入では単位認定という固有の論点が加わります。いまの単位がどれだけ認定されるかで、3年次以降の履修負担が変わります。ここは編入の単位認定の仕組みで扱いました。

⑤ 偏差値・知名度(重要度は下がる)

最後に置いたのは意図的です。データ上、経験者からの評価が最も下がった項目だからです。ゼロにする必要はありません。実際、大学名で受けられる企業が変わる場面はあります(学歴フィルターは編入で越えられるで扱いました)。ただしこれを第一基準にすると、18歳のときと同じ選び方を繰り返します。①〜④を見たうえで、最後の絞り込みに使うくらいがちょうどいいです。

まとめ

「失敗」の正体 判断ミスではなく、18歳の時点では見るべき項目が見えなかっただけ。偏差値の重要度は経験後に59.6%→36.6%へ下がる
本当に見るべきだった項目 キャリア支援(+18.9)・就職率(+14.7)・研究内容(+13.5)・学内の雰囲気(+12.1)。どれも受験生には見えない
まず分けること ①学部を間違えた ②大学を間違えた ③行く理由がない。③は編入では解決しない
編入の本当の利点 見るべき項目を知った状態で、もう一度選べること

大学選びをやり直せるかというと、厳密には「やり直し」ではありません。1〜2年ぶんの経験を持ち越したうえでの、2回目の選択です。18歳のときより条件は良くなっています。

そのうえで、判断はあなたに委ねます。上のチェックリストを自分の志望校に当てはめてみて、いまの大学との差がはっきり書き出せるなら、編入を検討する理由があります。逆に書き出せないなら、まだ動くタイミングではないかもしれません。それを確かめること自体が、次の選択の質を上げます。

私たち2人も、それぞれ一度目の進路選択のあとで、専門学校を経て神戸大学と名古屋大学の経済学部へ編入しました。2回目の選択をした側として、いまの状況で何が見えていて何が見えていないかを一緒に整理できます(運営者プロフィールはこちら)。

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