「大学編入は難しいのか」を倍率で確かめようとして、当メディアが要項と入試結果を読んだ経済・経営系25校を並べてみました。結果はこうです。
| 倍率の出せ方 | 校数 | 中身 |
|---|---|---|
| 実質倍率(受験者÷合格者)が出せる | 10校 | 志願者・受験者・合格者が公表されている |
| 志願者でしか割れない | 4校 | 受験者数が非公表。当日欠席した人を含んだままの数字になる |
| 数字はあるが倍率にならない | 6校 | 2段階選抜、合格者0人の年がある、集計の前提が違う |
| 倍率が出せない | 5校 | 合格者数などが公表されていない、または当メディアが見つけられなかった |
25校のうち、素直に倍率を計算できたのは10校でした。残りは、数字が足りないか、倍率という考え方が当てはまりません。
そして計算できた10校を見ると、もう1つ分かります。同じ大学の年度差が、大学どうしの差より大きいのです。大阪大学は3.8倍→14.7倍→4.8倍、同志社大学 商学部は6.0倍→7.2倍→1.6倍と動いています。
この記事では、25校の実数を並べたうえで、倍率を何に使えて何に使えないのかを整理します。
この記事の要点
- 25校のうち実質倍率を計算できたのは10校。残りは数字が足りないか、倍率が当てはまらない
- ⚠️同じ大学の年度差が、大学間の差より大きい。大阪大学は3.8→14.7→4.8倍
- ⚠️募集人員は席の数ではない。京都大学は最終合格0人の年があり、信州大学の応用経済学科も令和8年度は合格0人
- 逆に募集人員より多く合格を出す大学もある(滋賀大学は募集15人に対して最終合格21〜27人)
- 倍率から受験校は決められない。使えるのは「公表の仕方」から読める、その大学の運用のしかた
実質倍率が出せた10校
受験者数と合格者数の両方が公表されている大学です。受験者÷合格者で計算しています。
| 大学 | 募集 | 実質倍率(直近3年) |
|---|---|---|
| 長崎大学 経済学部 | 15 | 2.2 → 1.0 → 1.9倍 |
| 下関市立大学 経済学部 | 20 | 1.5 → 1.5 → 1.9倍 |
| 新潟大学 経済科学部 | 10 | 1.3 → 1.6 → 2.7倍 |
| 山形大学 人文社会科学部 | 25(学科全体) | 3.2 → 3.3 → 3.6倍 (5年分では2.9〜3.6倍) |
| 島根大学 法文学部 法経学科 | 10(学科計) | 4.3 → 2.5 → 3.5倍 |
| 神戸大学 経済学部 | 20 | 4.6 → 3.3 → 3.3倍 |
| 神戸大学 経営学部 | 20 | 4.1 → 4.4 → 4.0倍 |
| 大阪大学 経済学部 | 10 | 3.8 → 14.7 → 4.8倍 |
| 横浜国立大学 経済学部 | 15 | 7.3 → 5.3 → 5.4倍 |
| 同志社大学 商学部 | 若干名 | 6.0 → 7.2 → 1.6倍 |
出典:各大学が公表している募集要項・入試結果・入学者選抜実施状況(直近3年度分。山形大学のみ5年分が公開)。実質倍率は受験者数÷合格者数で計算しました。この割り算は当メディアがしたもので、大学が倍率として出している数字ではありません。⚠️大学によって集計の単位が違います(学科ごと・コースをまとめたもの・学部全体)。横に並べて優劣を比べられるものではありません。
1.0倍から14.7倍まで開いています。ただしこの幅を「入りやすい大学と入りにくい大学の差」と読むと間違えます。次の節がその理由です。
⚠️同じ大学の年度差が、大学間の差より大きい
上の表を、大学ごとの振れ幅で並べ直します。
| 大学 | 3年の動き | いちばん低い年との差 |
|---|---|---|
| 大阪大学 経済学部 | 3.8 → 14.7 → 4.8倍 | 10.9ポイント |
| 同志社大学 商学部 | 6.0 → 7.2 → 1.6倍 | 5.6ポイント |
| 横浜国立大学 経済学部 | 7.3 → 5.3 → 5.4倍 | 2.0ポイント |
| 島根大学 法文学部 法経学科 | 4.3 → 2.5 → 3.5倍 | 1.8ポイント |
| 新潟大学 経済科学部 | 1.3 → 1.6 → 2.7倍 | 1.4ポイント |
| 神戸大学 経営学部 | 4.1 → 4.4 → 4.0倍 | 0.4ポイント |
大阪大学は1校の中で10.9ポイント動いています。神戸大学 経済学部と横浜国立大学の差(3.3倍と5.4倍=2.1ポイント)より、ずっと大きい。
原因は志願者ではありません。大阪大学の志願者は24人から44人で、大きくは動いていません。動いたのは合格者の数です。令和7年度は44人が受験して合格3人でした。要項に「選考の結果、募集人員にかかわらず合格としないことがあります」と書かれていて、実際にそう運用されています。
同志社大学 商学部も、合格者のほうが動きます。3人・5人・8人と増えているのに、志願者は41人から14人へ減りました。受けた人が少ない年のほうが合格者が多い、という逆の動き方をしています。前年の倍率は参考になりません。
一方で、動かない大学もあります。神戸大学 経営学部は3年とも4倍前後で、振れ幅が0.4ポイントしかありません。横浜国立大学も合格者が14・15・13人と募集人員の15人にほぼ一致しています。この2校は、前年の数字が今年の目安として使える数少ない大学です。
次に読む大阪大学 経済学部 編入の難易度・試験科目・対策【2027年度】
志願者でしか割れない大学が4校ある
受験者数を公表していない大学です。志願者÷合格者になるので、当日欠席した人を含んだままの数字になります。
| 大学 | 募集 | 志願者÷合格者 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 筑波大学 社会学類 | 10 | 6.0 → 6.1 → 6.4 → 5.8倍(4年) | 合格者は4年とも10〜12人で動かない |
| 埼玉大学 経済学部 | 10 | 5.2 → 4.5 → 3.9倍 | 合格は11・10・10人で枠がほぼ埋まる |
| 関西大学 商学部 | 若干名 | 2.2 → 4.0 → 2.4倍 | 合格者は3年とも5人 |
| 龍谷大学 経済学部 | 12 | 1.3 → 1.7 → 1.2倍 | ⚠️指定校推薦編入の実績を含むので、一般だけの倍率はこれより高い |
実際の倍率は、どれもこの数字より低く出ます。欠席した人が分母に残っているからです。下関市立大学は志願者と受験者の両方を出していますが、その差は毎年9人から14人ありました。1割から3割が受けに来ない年があるということです。
⚠️龍谷大学だけは逆方向の注意が要ります。合格者に指定校推薦の分が含まれているので、一般で出願した人の合格率は公表値より厳しい側にあります。「1.2倍だから楽」とは読めません。
倍率という考え方が当てはまらない大学が6校ある
数字は公表されているのに、割っても意味が出ない大学です。
| 大学 | なぜ倍率にならないか |
|---|---|
| 京都大学 経済学部 | 2段階選抜。志願11〜22人に対して最終合格0〜4人。⚠️令和7年度は合格0人 |
| 滋賀大学 経済学部 | 2段階選抜。第1次で約半分が落ち、第2次は6〜7割が通る。段階ごとに通過率が違う |
| 東北大学 経済学部 | 合格者数が公表されていない。志願10人→入学0人、志願5人→入学1人。⚠️しかもこの2年は選抜方法が今と違う |
| 信州大学 経法学部 応用経済学科 | 公開は令和8年度の1年分だけ。志願4人・受験4人・合格0人 |
| 高崎経済大学 経済学部(2年次) | 7年分あるが、合格者は毎年0人か1人で合計5人。割る意味が薄い |
| 富山大学 経済学部 | ⚠️要項の注に「志願者・受験者数は第1志望学科の数を計上」とあり、第2志望で合格した人がいる。追加合格を含む年もある |
京都大学と信州大学は、合格者0人の年があります。志願者が募集人員を下回っていても、基準に届かなければ誰も入れません。「志願者が少ない=狙い目」が成り立たない試験です。
富山大学は数字そのものは3年分あります。ただし要項が「第1志望学科の数を計上したもの」と注記していて、学科別の志願1人・受験0人に対して合格3人という年があります。注記を読まずに割ると、実態と違う数字が出ます。
次に読む京都大学 経済学部 編入の難易度・選考方法・対策【令和9年度】
倍率が出せない大学が5校ある
| 大学 | 何が足りないか |
|---|---|
| 名古屋大学 経済学部 | 合格者数が非公表。志願者数と入学者数は出ている |
| 広島大学 経済学部 | 志願者数・合格者数が、当メディアが見た6か所のどこにも無かった。分かるのは入学者数だけ |
| 鹿児島大学 法文学部 | ⚠️合格者数は当メディアが合格者一覧の受験番号を数えたもの。志願者数は5か所見ても見つからなかった |
| 三重大学 人文学部 法律経済学科 | 4か所と大学サイト120ページを巡回したが見つからなかった |
| 近畿大学 経済学部 | 志願者数・合格者数の記載が見つからなかった |
注:「見つからなかった」は、当メディアが確認した範囲の話です。公表されていないと断定はできません。倍率を知りたい場合は各大学の入試担当に問い合わせてください。
他のサイトで見る編入の倍率が、この5校について書かれていたら、出どころを確かめてください。当メディアは見つけられませんでした。
⚠️募集人員は、席の数ではない
25校を並べて、いちばんはっきり出たのがこれです。募集人員と実際の合格者数は一致しません。しかも両方向にずれます。
| 方向 | 大学 | 中身 |
|---|---|---|
| 募集より少ない | 大阪大学 経済学部 | 募集10人に対して合格3〜9人。3年とも埋まっていない |
| 京都大学 経済学部 | 募集20名以内に対して最終合格0〜4人 | |
| 信州大学 経法学部 応用経済学科 | 募集10人に対して合格0人(令和8年度) | |
| 募集より多い | 滋賀大学 経済学部 | 募集15人に対して最終合格21〜27人 |
| 鹿児島大学 法文学部 | 募集10人に対して合格11〜13人 | |
| 長崎大学 経済学部 | 募集15人に対して合格17〜18人 |
多く出している大学は、辞退を見込んでいます。神戸大学 経済学部は合格20〜21人に対して入学14〜17人で、毎年数人が別の大学へ行っています。新潟大学も令和6・7年度は合格16人が募集10人を上回っていました。
逆に少ない大学は、枠を埋めることより水準を優先しています。要項にもそう書いてあります。大阪大学の要項は、合格としないことがあると明記しています。東北大学の要項には「選考の結果によっては、合格者数が募集人員に満たない場合があります」とあります。
「募集10人なら10人入れる」と考えないでください。どちらの運用かは要項の一文で分かります。
倍率の分母には、受けに来ない人が入っている
倍率は「志願者」か「受験者」を合格者で割った数です。この2つには毎年かなりの差があります。出願したのに当日来なかった人です。
| 大学 | 志願者 → 受験者 | 受けに来なかった割合 |
|---|---|---|
| 島根大学 法文学部 法経学科 | 21→17/16→10/15→14 | 7〜38% |
| 下関市立大学 経済学部 | 43→29/39→30/47→38 | 19〜33% |
| 横浜国立大学 経済学部 | 116→102/103→80/82→70 | 12〜22% |
| 新潟大学 経済科学部 | 24→20/28→25/44→35 | 11〜20% |
| 同志社大学 商学部 | 22→18/41→36/14→13 | 7〜18% |
| 山形大学 人文社会科学部 | 49→41/47→43/54→51/49→41/63→58 | 6〜16% |
| 大阪大学 経済学部 | 39→34/44→44/24→24 | 0〜13% |
| 神戸大学 経営学部 | 85→81/89→87/86→83 | 2〜5% |
出典:各大学が公表している入試結果・入学者選抜実施状況(山形大学のみ5年分、ほかは直近3年分)。割合は志願者と受験者の差から当メディアが計算しました。
神戸大学 経営学部はほぼ全員が受けに来ますが、下関市立大学は2割から3割が来ません。同じ「倍率」という言葉を使っていても、分母の中身が違います。
この差がいちばん極端に出たのが高崎経済大学 経済学部でした。志願10人に対して受験3人、志願4人に対して受験1人という年があります。⚠️ただし分母が2人から10人なので、割合で語れる規模ではありません。
⚠️なぜ来ないのかは、どの大学も公表していません。他の大学に受かって来なかったのか、準備が間に合わなかったのかは分かりません。読み取れるのは1つだけです。志願者で割った倍率は実態より高く出ていて、その度合いが大学によって違います。
つまり倍率は「受験者数÷合格者数」でしかなく、競う相手の水準とは別物です。逆に言うと、きちんと準備した人から見た実際の難しさは、数字の印象ほどではありません。その準備をいつ始めるかは、大学編入はいつから準備すべき?で月別に並べました。
では、何を見ればいいのか
倍率から受験校は決められません。かわりに使えるものが3つあります。
1. 合格者数が年ごとに動くかどうか
これがいちばん効きます。合格者数が毎年ほぼ同じ大学は、前年の数字が目安として使えます。横浜国立大学は14・15・13人、筑波大学は10〜12人、関西大学 商学部は3年とも5人です。
逆に大阪大学は9・3・5人、同志社大学 商学部は3・5・8人と動きます。この2校は、前年の数字を自分の当落の材料にできません。
2. 要項に「満たない場合がある」と書いてあるか
書いてある大学は、枠を埋めない運用をします。大阪大学と東北大学の要項には、合格者が募集人員に届かないことがあるという趣旨の一文があります。そして実際に届いていません。京都大学と信州大学には合格0人の年があります。
この種の大学を本命にするなら、競争相手より上に行くのではなく、基準を超えることを目標にします。
3. どこまで公表しているか
公表の範囲そのものが手がかりになります。志願者・受験者・合格者・入学者まで出し、合格最低点まで出す大学があります。下関市立大学は満点300点に対する学科別の合格最低点を3年分公表していて、175点から201点でした。
数字を出している大学ほど、受ける前に目標を具体的に置けます。これは難易度とは別の、受験のしやすさです。目標を日付と点数に落とす手順は、編入に受かる人は目標が具体的で手順を書いています。
次に読む下関市立大学 経済学部 編入の難易度・試験科目・対策【2027年度】
まとめ
| よくある見方 | 25校を並べて分かったこと |
|---|---|
| 倍率で難易度が分かる | 25校中10校しか計算できない |
| 倍率が低い大学は入りやすい | 京都大学と信州大学は志願者が少ないのに合格0人の年がある |
| 去年の倍率が参考になる | 大阪大学は1校の中で3.8倍から14.7倍まで動く |
| 募集10人なら10人入れる | 埋めない大学と、多めに出す大学がある |
| 倍率が高い=相手が強い | ⚠️分母に何が混ざっているかは分からない |
当メディアの運営者も、受験校を倍率で決めてはいません。2014年に出願したのは滋賀大学・名古屋大学・東北大学の3校で、東北大学は出願だけして受けていません。名古屋大学に受かったからです。つまりその年の東北大学の志願者には、受けに来なかった運営者が1人入っています。
決め手になったのは倍率ではなく、本命がどこかと、日程がどう並ぶかでした。あなたも同じ順で決められます。まず行きたい大学を決める。次に日程を並べて、併願できる組み合わせを作る。倍率を見るのは、そのあとで構いません。22校の日程を1枚に並べたものは、編入試験に落ちたらどうなる?の併願カレンダーで見られます。
自分の志望校が「埋める大学」なのか「埋めない大学」なのか、要項のどこを読めば分かるのかで迷ったら、相談してください。











