同じ半年を使う2人がいるとします。一人は「神戸大学に編入する」と決めました。もう一人は「11月3日の数学と経済学で点を取るために、8月末までに教科書を3周し、9月から過去問に入る」と決めました。目標として立派なのは前者ですが、半年後に机に向かっていた時間が長いのは、たいてい後者です。

この差は気合いの差ではありません。目標をどこまで細かく決めたかの差です。そして、この差が成果に出ることは、心理学の分野で何十年も繰り返し確かめられています。この記事では、その研究を編入の準備に当てはめて、「頑張る」を予定表に変えるところまでを書きます。

この記事の要点

  • 「ベストを尽くせ」より具体的な目標のほうが成果が高いことは、多数の研究で確かめられている
  • 「いつ・どこで・何をするか」まで決めると達成率が上がる。94件の検証をまとめた分析で効果量 d=.65
  • 要項で分かるのは日程と出願の最低ラインまで。必要な水準は経験者の話を参考に自分で決める
  • 1日ぶんは「何時から何時まで、何問目から何問目まで」で書く。時間は多めに取る
  • 計画はやり切れなくてよい。目的は、机に向かってから迷わないこと
  • 具体的に決めて動いた過程は、編入の面接でも就職活動でも見られている

「ベストを尽くす」では成果が上がりにくい

目標の立て方と成果の関係は、心理学で古くから調べられてきたテーマです。分かっていることは2つあります。

分かっていること 効果の大きさ
「ベストを尽くせ」より、具体的で難しい目標のほうが成果が高い 効果量 d=.42〜.80
いつ・どこで・何をするかを先に決めておくと、目標の達成率が上がる 効果量 d=.65(94件の検証・8,000人超)

出典:目標設定理論について Locke, E. A. & Latham, G. P. New Directions in Goal-Setting Theory(2006)ほか。実行意図について Gollwitzer, P. M. & Sheeran, P. Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-analysis of Effects and Processes(2006)。いずれも編入試験を対象にした研究ではありません。作業や行動の続き方を測ったものなので、そのつもりで読んでください。

2つ目のほうが、編入の準備には効きます。たとえば「今年こそ英語をやる」と決めた人がいます。もう一人は「毎週土曜の10時から12時、市立図書館で『究極のゼミ Part5&6』の第3章を解く」と決めました。実際に手が動く回数は、後者のほうが多くなります。前者は決意で、後者は予定だからです。

ここで大事なのは、意志の強さの話をしていないことです。同じ人でも、決め方を変えると行動が変わります。だから「自分は続かない性格だから」という理由で編入を諦める必要はありません。決め方のほうを変えます。

要項に書いてあるのは日程まで。水準は自分で決める

目標を具体的にしろと言われても、材料がなければ決められません。ここで先に断っておくと、募集要項で分かるのは日程と、出願できる最低ラインまでです。「実際に何点あれば戦えるのか」「専門をどこまでやればいいのか」は書いてありません。

要項に書いてあること 書いていないこと
名古屋大学 経済学部 TOEIC 590点以上で出願できる 実際に編入した同期11〜12人では860点が真ん中で、900点台も4人いた
滋賀大学 経済学部 TOEICのスコアを提出する(第1次の得点に入る) 同じ専門学校の同級生5人は860・790・760・750・745で、745が補欠合格
専門科目 科目名だけ(「経済学」「経済数学」など) どの範囲がどの深さで出るか

※右の列は当メディアの運営者・直野が見た範囲の話です。名古屋大学は本人の同期の実感、滋賀大学は10年以上前の同級生5人についての記憶で、合格ラインとして公表された数字ではありません。年度によっても変わります。

この右の列が、目標を決めるときに要る情報です。名古屋大学を受けるなら、要項の590点を目標に据えると、出願はできても英語で先行されます。だから経験者の話を参考に、自分で数字を決めます。たとえば「TOEICは800点」と置く、という決め方です。

専門も同じ形で決められます。「経済学を頑張る」ではなく、「この参考書とこの問題集を10周して、正答率80%以上になったらOK」まで置きます。ここまで決まると、次にやることが自動的に出てきます。

各大学が何を要求しているかは経済学部に編入できる大学一覧に並べています。英語の目標点の考え方は大学編入の英語対策|TOEICは何点必要かにまとめました。


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経済学部に編入できる大学一覧|国公立中心

1か月・1週間・1日に割っていく

目標の数字が決まったら、そこから逆算します。「TOEIC 800点」と置いたなら、そのために単語帳を何周するか、問題集を何周するか、それをいつまでに終えるか。決めた周回数を1か月ぶん、1週間ぶん、1日ぶんに割っていきます。

決意で終わっている 予定になっている
英語を頑張る 土曜10〜12時と日曜14〜16時、市立図書館で『究極のゼミ Part5&6』を1章ずつ。8月末までに全章3周
経済学の基礎を固める 平日は19〜20時に教科書を10ページ。7月中に1周、8月は章末問題だけ2周、9月から過去問
早めにTOEICを受ける 出願が9月24日なので、6月・7月・9月上旬の3回を今週中に申し込む。9月の回は結果が出るまで約3週間かかるので、これが最終
志望理由書を書く 8月第1週に研究テーマを1行で書く。第3週に下書き、9月1日に添削を依頼、9月15日に清書

※右の列は書き方の例です。時間帯も周回数も、自分の生活と現在地に合わせて置き換えてください。

1日ぶんは「何時から何時まで、何問目から何問目まで」で書く

計画を立てるのが苦手な人ほど、ここを細かくしてください。「明日はこの参考書とこの参考書をやる」では、まだ予定になっていません。やる量が決まっていないので、机に向かってから決めることになります。

書き方はこうです。何時から何時まで、どの教材の何問目から何問目までやるか。たとえば「9時から10時半までに、TOEIC Part5の問題集の1問目から30問目まで解く」です。

もうひとつ、時間は多めに取ってください。1時間で終わりそうなら1時間半で置きます。ぴったりで組むと、少し詰まっただけで予定が崩れ、その日の残りが全部ずれます。余裕を入れておけば、崩れずに次へ進めます。

実例|出願日から逆算した3か月

当メディアの運営者・直野は、専門学校に通いながら3か月でTOEICを440点から860点まで上げています。このとき起点にしたのは試験日ではありませんでした。

直野 史明直野 史明名古屋大学 経済学部 編入

編入でTOEICを使うときは、スコアを出願書類に添えて出します。だから締切は試験当日ではなく出願日です。しかもTOEICは受けてから結果が出るまでに時間がかかるので、そこも見込んで受験日を決めないと間に合いません。

私は先に「何月の回を受けるか」を全部決めて、そこから逆算して月ごとにやることを割り振りました。4月は手持ちの教材を全部1周する、5月からPart5と6を回す、という順番です。

そこからさらに、明日はこれ、来週の何曜日はこれ、来月の何日にはここまで終わっている予定、というところまで書いていました。実際には、そのとおりにやり切れてはいません。それでも名古屋大学には受かりましたし、TOEICも目標は800点でしたが、860点まで取れました。

結果は4月440点、5月680点、6月745点、7月860点でした。7月は志望理由書の作成と重なり、TOEICに使えたのは合計20時間ほどです。それでもスコアが上がったのは、5月と6月に決めたやり方が残っていたからでした。詳しい教材と周回数は編入のTOEICを3か月で440→860にした記録にあります。

ここで見てほしいのは点数の伸びではなく、最初に受験日を全部決めてから中身を割り振ったという順番のほうです。研究でいう「いつ・どこで・何をするか」を先に決める、がそのまま起きています。

そしてもうひとつ、計画は完璧にこなさなくて構いません。やり切れなかったのに、目標に置いた800点を超えています。予定を書く目的は、書いたとおりに動くことではなく、迷う時間をなくすことです。今日やることが決まっていれば、机に向かってから何をするか考えずに済みます。その積み重ねが時間の差になります。

具体的に動いた過程は、面接でも見られている

ここまでは合否の話でした。もうひとつ、後になって効いてくる面があります。

編入試験には口述試験や面接を課す大学があります。そこで聞かれるのは志望動機だけではありません。大阪大学 経済学部の面接では、経済学をどう勉強してきたのかまで問われています大学編入の面接・口頭試問対策に、実際に出た質問を載せています)。これは面接の直前に用意できる答えではありません。何冊目を何周したかまで口に出せる状態は、実際にその手順で進めた人にしか作れないからです。

そして編入した先の就職活動でも、同じことが起きます。当メディアの運営者2名は、いずれも編入の経緯を面接で聞かれています。ここからは、採用する側に回った直野の話です。

直野 史明直野 史明名古屋大学 経済学部 編入

採用する側として一番感じるのは「再現性がありそうだ」という安心感です。目標だけがある人はたくさんいますが、そのために何を、いつ、どんな順番でやってきたかを具体的に語れる人は、実は多くありません。逆算して行動を組み立てられる人は、入社後も「やるべきことが曖昧な状況」で自分なりに優先順位をつけて動けるだろうと想像できます。

もう一つは、失敗や停滞への向き合い方が見えることです。目標に向かって行動していれば、計画通りにいかない場面が必ずあります。そこで軌道修正した経緯まで話してくれる人は、うまくいった話しかしない人より信頼できます。うちの会社に入ってからも、想定外のことは起きるので。

なので面接では「目標」そのものより、その目標を、なぜその方法で、どう調整しながら追いかけたかというプロセスの解像度を見ています。

※これは当メディアの運営者(合同会社Zekk COO)が採用に関わってきた立場から述べたものです。企業一般の採用基準を示す調査データではありません。

注目したいのは、見られているのが結果ではなく調整の過程だという点です。計画どおりに進まなかった話は、隠すものではなく材料になります。直野の3か月にも、6月に体調を崩して745点で止まった回があります。その回をどう受け止めて7月に何を変えたかは、点数そのものより語れる中身が多いはずです。

まとめ|逆算の起点は、志望校が決まった日

この記事で言いたいことは1つです。目標を細かく決めた人のほうが、結果として机に向かう時間が長くなり、受かりやすくなります。面接で評価されるからではなく、準備が続くからです。

手順にすると3つです。

1 志望校を数校に絞る。日付が入らないと予定が書けないため、ここが先
2 要項から出願期間・試験日・科目・英語の要件を書き出す
3 そこから逆算して、いつ・どこで・何をするかを週単位で決める

時期については、毎年ほぼ同じ形が繰り返されます。2027年度でいちばん早かった滋賀大学 経済学部は、8月20日に出願を受け付けて8月26日に締め切りました。試験が秋でも、出願は夏のうちに終わる大学があるということです。夏休みに入ってから調べ始めると、その年の選択肢はもう減っています。学年別の目安は大学編入はいつから準備すべき?学年別スケジュールで解説にまとめました。


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志望校と予定を、一緒に決めるところから

この記事の手順は、1番目の「志望校を絞る」で止まる人がほとんどです。国公立の経済・経営系学部への編入を目指す方向けに、初回30分の無料相談1週間のLINE無料相談を実施しています。編入経験者が、今の状況から狙える大学と、そこから逆算した予定を一緒に組み立てます。

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