「学歴なんて社会に出たら関係ないよ」——一度は言われたことがあると思います。言った側に悪気はありません。ただ、その言葉で引け目が消えた人を、私たちはほとんど見たことがありません。

消えない理由ははっきりしています。学歴コンプレックスは意見で上書きできる感情ではなく、比較対象が見えないまま想像で埋めている状態だからです。相手の励ましは想像を打ち消しません。打ち消せるのは、自分の大学と志望していた大学について、実際の数字を並べて見ることのほうです。以下では、その想像を数字に置き換える手順から始めます。

この記事の要点

  • 引け目の正体は「他大学の実態を知らないまま、想像で差を見積もっている」こと
  • 全国の大学は進路データを公表しており、大学ポートレートで誰でも比較できる
  • 数字を見たうえで差が本物なら、編入で最終学歴を変える手がある
  • 数字を見たら差が思ったほどでない場合もある。その時は編入をやらない判断も正解

引け目が消えないのは、比べる材料を持っていないから

学歴コンプレックスを抱えている人の多くは、自分の大学の就職実績も、憧れた大学の就職実績も、正確には知りません。知らないまま「あちらは自分より遥かに良いはずだ」と見積もっています。この見積もりには上限がないので、いくら励まされても不安が減らないのは当然です。

感情の問題として扱うと出口がありませんが、情報が欠けているだけの問題として扱えば手を打てます。しかも必要な情報は、すでに公開されています。

大学ポートレートで、想像を数字に置き換える

大学改革支援・学位授与機構が運営する「大学ポートレート」では、全国の大学が学部単位で卒業者数・就職者数・進学者数・産業別の就職状況などを公表しています。志望していた大学も、今いる大学も、同じ形式で並べて見られます。

① 自分の大学の学部ページを開く

卒業者数のうち何人が就職し、何人が進学したかを確認します。ここで初めて、自分がいる場所の実像が数字になります。

② 憧れていた大学の同じ学部を開く

同じ項目を並べます。たとえば神戸大学経済学部の2025年度は、卒業者278人・正規就職221人・大学院進学15人で、就職先の所在地は東京都123人、大阪府52人、兵庫県14人でした。

③ 差がどこに出ているかを特定する

就職率そのものより、就職先の地域と産業の分布に差が出ることが多くあります。差が「学生の能力」ではなく「接続している採用市場の広さ」に現れている、という見え方になるはずです。

この作業をすると、多くの場合2つのどちらかになります。想像していたほどの差はなかった、と分かるか。あるいは、差は確かにあってそれは主に採用市場への接続で生じている、と分かるか。どちらに転んでも、想像で消耗する状態からは抜けられます


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学歴フィルターは編入で越えられる|仕組みと突破法

差が本物だったときに使える手

数字を見て差が実在すると分かった場合、最終学歴そのものを変えるという選択肢があります。編入は、在籍中に修得した単位を持ったまま別の大学の3年次に入り直し、そこで学位を取る進み方です。

ここで正確に押さえておきたいのは、編入しても前に在籍した大学が経歴から消えるわけではないという点です。最終学歴と学位記は編入先のものになりますが、履歴書の学歴欄には前籍校から時系列で書くのが原則とされます。詳しくは学歴フィルターは編入で越えられるのほうで触れています。

そしてこの事実は、引け目を抱えている人にとってはむしろ扱いやすい話です。隠す前提で動くと、面接で触れられるたびに緊張する構図が続きます。最初から説明する前提なら、自分で進路を選び直して実行した経歴として話せます。編入試験は誰かに言われて受けるものではないので、この説明には実体が伴います。

隠そうとする場合 説明する前提で準備する場合
履歴書 省略は学歴詐称にあたるとされる 前籍校から時系列で記載できる
面接 触れられるたびに動揺する 想定質問として準備できる
語れる内容 大学名だけ 選んだ理由と、そのために何をしたか

編入をやらない、という判断も同じくらい正しい

数字を見て差が思ったほどではなかった場合、あるいは志望業界が大学名をあまり見ない領域だった場合は、編入に時間を使わないほうが結果につながります。編入試験の準備には英語のスコアづくりと専門科目の勉強で相応の時間がかかり、その時間を今の大学での実績づくりに回す選択と競合するためです。

編入が向くのは、卒業まで2年以上残っていて、志望する領域が学歴を参照しやすく、英語のスコアを積む時間を確保できる人です。この3つが揃わないなら、無理に編入へ寄せる必要はありません。

ここまで読んで、あなたはどちらでしたか。数字を並べてみて差が想像より小さかったのなら、引け目の正体はもう見えています。差が実在すると分かったのなら、次に確認するのは志望校の募集要項と英語の要件です。どちらの結論でも、想像の中で比べ続ける状態よりは前に進んでいます。まずは自分の学部のページを開くところから始めてみてください。

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